家にこもりがちになると、生きる意欲や身体機能が低下し、認知機能にも悪影響を及ぼすといわれています。また、外出しようという前向きな気持ちがありながらも、
「足腰が弱くなり、歩くのが億劫になってきた」
「出かける気持ちはあっても、すぐに座りたくなる。」
「腰を掛けられる場所がないので、なかなか出かけられない」
と感じている高齢者は少なくはありません。
たとえ誰か介助者が付き添っていても、すぐに座りたがる、それなのに座れる場所がないというのは困りものでしょう。最悪の場合、地面に直に座るということもできますが、そうすると立ち上がるのが大変です。
高齢者が座りたがる理由
よく座りたがる理由にはどんなものがあるのでしょうか。
認知症のため
認知症が進行すると足が弱るという症状がよく見られます。
また、体力維持や認知症の進行予防のために散歩に誘っても、本人が意味を理解していなければ、嫌がったり苦痛を感じたりして座りたがることも。
その場合には、「季節のお花を近所の公園に見に行く」、「買い物に付き合ってもらう」など、目的を伝えるといいでしょう。「楽しい」と思ってもらう目的を決めるのが継続のコツです。
また、痛みがあって歩きたくないのに、認知症のために訴えられないこともあります。「今日は座りたがる回数が多いな」と思ったら、体調面に変化がないか、けがをしていないかも合わせて確認したいところです。
体力の衰え
健康面の不安や体力の衰えから、外出を嫌がったり座りたがることがあります。電車などで座りたがるのも、主に体力の低下が原因です。
介助者が付き添うことで不安を減らせるかもしれません。体力については家の中で体操や足腰のトレーニングをして、少しずつ歩く距離を増やせたり、スピードを速くできたりするといいですね。
ただし、急激に体力が衰えた場合には注意が必要です。病気などの原因はないか、かかりつけ医に相談しましょう。
座りたがるときの対策
散歩先に腰かけられる場所を探しておく
散歩先や外出先で、座れる場所があるかどうかをあらかじめ探しておきましょう。ベンチなどがあれば理想的ですが、植え込みのフチなどに座らなくてはいけない場合もあります。
冷えて体調が悪くなってしまったり、汚れてしまったり、裂け目などでけがをしたりしないように、おしりに敷くタオルを用意しておくといいでしょう。
歩きやすいくつや服装にする
足に合った歩きやすいくつにするだけで、座りたがる頻度が減るかもしれません。また、転倒予防にもなります。
>>靴の脱ぎ履きを介助するポイント
動きやすい服装を心がけるのも大切です。
福祉用具を利用する
歩行による身体の疲れを軽減し、自立して歩行してもらうのには福祉用具の利用は有効です。
散歩や外出時、座りたがる高齢者におすすめなのは、以下のふたつです。
《杖》
デザインも豊富でおしゃれに使えますし、軽さを重視したものや安定性を重視したもの、使わないときは折りたたんでしまえるものなどもあるので、いろいろ探してみるといいかもしれません。
>>杖の種類と選び方
また、杖はタイプによっては福祉用具貸与の対象となっています。
>>福祉用具貸与(レンタル)とは 特徴と活用方法
軽さを重視したタイプ
安定性を重視したタイプ
使わない時は折りたためるタイプ
柄で選べるタイプ
色で選べるタイプ
素材で選べるタイプ
《歩行器・シルバーカー》
もっと長い時間歩きたいのに、やはりすぐどこか座れる場所を探してしまう方には、椅子付きの歩行器やシルバーカーを使うという手段もあります。それなら座れる場所をいちいち探す必要もありません。
これでしたら、散歩だけでなくちょっとした買い物もできるので便利でしょう。
歩行器は福祉用具として貸与の対象にもなっています。
>>福祉用具貸与(レンタル)とは 特徴と活用方法
シルバーカーは福祉用具貸与の対象ではありません。比較的歩行能力の高い人向けで下記のようなものがあります。
>>シルバーカー(手押し車)の利用方法と選び方