高齢者への介護において重要な”歯磨き”。口臭や細菌の繁殖を防ぐためにも、口の中を清潔に保つようにしましょう。また、いい施設かどうかを見極めるポイントとして「歯磨きや口腔ケアがきちんとできているか」をあげている専門家の声も安心介護内には投稿されています。
歯磨きなどの口腔ケアは、食べる楽しみを維持するためや虫歯を予防するだけではなく、誤嚥性肺炎を予防するなど、生命にかかわる大切なケアです。
>>高齢者の口腔ケアの目的と方法
大切なものでありながら、嫌がる高齢者が多い傾向にあります。
特に認知症のある高齢者は、口の中に触れられることを極端に嫌います。こうした歯磨きや口腔ケアの拒否は、介護において多くの人がぶつかる壁のひとつです。
- なぜ歯磨きを嫌がるのか
- 歯ブラシに慣れる
- 触れられることに慣れてもらう
- 「一緒に歯を磨こう」と声をかける
- 歯磨きは本人の了解を得てから行うのが基本
- 歯磨き前に歯茎のマッサージをする
- 歯磨きは嫌なことではないと思える工夫をする
なぜ歯磨きを嫌がるのか
高齢者が歯磨きされることに抵抗を示すのには、いくつかの理由があります。
たとえば認知症があれば、口の中に異物が入ってくることに強い警戒心を持つようになるでしょう。
また、口の中に食べ物の残りかすなどが残っていれば、口の中を見られることを恥ずかしいと感じるものです。
特に認知症がある場合、歯磨きを行うことを先に説明しても、口の中に歯ブラシを入れられると異物感に驚いてしまいます。すると、怖くなって口を閉じてしまうこともあるのです。
また、歯磨きは実際にされる側からしてみると、意外と痛さを感じるものです。
歯磨きする側は、自覚なく強い力で磨いてしまっていることがあるかもしれません。ブラッシングの力加減について、もう一度確かめてみてください。
高齢者の気持ちに配慮しつつ、歯磨きの必要性を伝えていかなければいけません。
それでは、嫌がられずに歯磨きするための方法についてご紹介していきましょう。
歯ブラシに慣れる
まずは”歯ブラシ”に慣れることが大切です。
たとえば、歯磨きや食後にこだわらず、合間合間に歯ブラシを持ってもらったり、ご機嫌の良いときにあーんと口をあけてもらうなどレクリエーションのように歯ブラシと触れてもらうことで、歯ブラシへの嫌悪感なくしてもらいましょう。
触れられることに慣れてもらう
いきなり口を触られることに抵抗を感じている場合があります。その場合はまずは手のマッサージから始め、次の日には肩を揉んだりと、徐々に触れられることに慣れてもらうのがいいでしょう。
日本訪問歯科協会が公開している動画で詳しく解説されているので、参考にしてみてください。
「一緒に歯を磨こう」と声をかける
安心介護には歯磨きをしてもらうポイントとして、何人かの専門家からあがっていたのが「一緒に歯を磨こう」と声をかけるというものでした。
今の段階ですと、まだ『歯磨き』と言う表現で、
どのようなことをするのかが、お父様は解る段階でしょうか。
もしかしたら…ですが、『歯磨き』と言う言葉と、
『歯磨きをする』と言う動作が結びつかなくなっている
と言うようなことはありませんか?解らないから、しない(できない)→でも、それを誰かに知られたくない
→だから、聞かれたら『やった』と答える自分が物忘れがひどくなったことを悟られたくないとか、
そんなこともできなくなったという事実を受け止められずに、
いらっしゃるのかも知れません。(中略)また自分も、歯磨きを嫌がる方に、
『私もこれから歯磨きするので、良かったら一緒にしませんか?』
みたいな感じで声を掛けて、並んで歯磨きしたこともありました。その施設が、そこまでできる体制が整っているのか、
そのあたりが解らないので何とも言えません。でも、今一度、ケアマネ等にきちんと相談して、
お父様の認知症の度合いを見極めることも必要では?
と想います。
(ケアマネドットコム専門家 †裂屠†【SaKiTo】さんの回答)
引用元:介護のQ&A「父に対するユニットの対応について」
歯磨きをしていないのに「した」と言っているようなら、それは歯磨きの拒否ではなく、認知症によるもの忘れを取り繕っているのかもしれません。
歯磨きは本人の了解を得てから行うのが基本
一般には歯医者での受診や治療でもない限り、口の中を他人に見せる機会はありません。
これは、親しい間柄である家族相手でも同じでしょう。だからこそ、いきなり許可もなく触れられると、高齢者は驚いて拒否反応を示してしまいます。
歯磨きする場合、まずは歯磨きをしてもよいかどうか本人の許可を得るようにしましょう。
歯磨き前に歯茎のマッサージをする
歯磨きの前に、歯茎のマッサージをしてあげると自然と口が開きやすくなって、歯磨きのときに開口しやすくなります。
また、マッサージの際にには、”歯磨き”という言葉に抵抗があるようなので、”お口のマッサージすると気持ち良いよ”、"きれいにしてからごはんを食べるともっと美味しいよ"など、本人が抵抗を感じないような声のかけ方を心がけてあげましょう。
口を開けるためのマッサージ
口唇を歯に向かって軽く押し付けて、そのままゆっくり押し上げて、次に下げます。
※マッサージをするときは必ずビニール手袋をするなど、決して素手では行わないようにしましょう
歯茎のマッサージ
1、口の中を上下左右4つに分けて1/4ずつ行います。
2人差し指の腹の部分を歯と歯肉との境目におき、前歯から奥歯に向かって擦ります。
※マッサージをするときは必ずビニール手袋をするなど、決して素手では行わないようにしましょう
マッサージに使える手袋
プラスティック手袋
二トリル手袋
まごころてぶくろ (M、粉無)
歯磨きは嫌なことではないと思える工夫をする
いきなり歯ブラシを口の中に入れるなど強制的に歯磨きを行おうとすると、歯磨きそのものに強い拒否反応を示してしまいます。それが結果的に、その後の歯磨きをより困難にさせてしまうでしょう。
大切なのは、歯磨きの前に話しかけることです。
口の中をきれいにするとスッキリする、あるいは歯磨きは気持ちのよいものなのだということを伝えましょう。ゆっくり話しかけながら、歯磨きへの抵抗感をへらしていきます。
手のひらや腕など口から遠い部分から触れていき、徐々に触れる手を口に近づけていきます。
決して無理やり進めずに、本人から同意を得た場合のみ行いましょう。
どうしても歯磨きできなかった際には、お茶や水などを飲んでもらい、少しでも口の中を清潔にするよう心掛けることが大切です。