不眠・睡眠障害・昼夜逆転とは
認知症であるか否かに関係なく、高齢になると朝早く目が覚めてしまったり、夜中に何度も起きたりすることはよくあることです。しかし認知症で神経伝達物質の量が変化すると、こうした睡眠障害の症状はなおさら多く見られるでしょう。
また、夜しっかり眠れないことで、日中に睡魔に襲われることも少なくありません。眠りの質が悪いと昼間に寝てしまい、夜になると覚醒するという昼夜逆転の症状が現れます。そのため、夜中に家の中をうろうろしたり、寝ている家族を起こして話しかけたり、興奮して騒ぐこともあるのです。
不眠・睡眠障害・昼夜逆転の原因
いったい、なぜこうした症状が起きてしまうのか。その原因には、次のようにさまざまなものが考えられます。
体内時計のずれ
自律神経の調整機能が低下し、昼は活動、夜は休息というリズムが崩れてしまいます。
日中の過ごし方
昼寝の時間が長すぎることで、日中の活動が少なくなってしまいます。
寝室の環境
寝室が暑すぎる、寒すぎる、音がうるさい、明るすぎるなど環境の問題。
身体的な不快感
頻繁にトイレへ行きたくなったり、床ずれによって背中やお尻の痛みが出たりします。
夜中のせん妄
幻覚を見ることによって興奮してしまいます。
不安
日中は周りに人がいて安心ですが、夜中1人になると不安になります。
不眠・睡眠障害・昼夜逆転の対応方法
眠れないからと言って、「早く寝なさい」「毎日いいかげんにして」などとしかりつけるのはやめましょう。また、夜に寝室から出られないようにするのも避けてください。
まずは不眠や昼夜逆転の原因をつきとめること。そして、それらの原因を取り除いて、少しずつ生活リズムを整えることが大切です。
不眠・睡眠障害・昼夜逆転の予防法と改善策
次のような点に配慮することで、症状の予防や改善が期待できます。
体内時計の正常化
朝はしっかりと太陽を浴び、日中にできるだけ活動して適度に体を疲れさせます。散歩に出かけたり、デイサービスなどを利用したりするのもよいでしょう。実際にデイサービスに行った日は、よく眠れると感じている人も多いようです。
入浴
寝る前にぬるめのお風呂に入ったり、足湯をしたりすることで身体が温まり、寝付きやすくなります。
頻尿の改善
寝る前に排尿を済ませておいても、夜中に何回もトイレに起きる場合。膀胱に異常がないか調べましょう。特に問題なければ、精神的なものが影響していると考えられます。失禁をして叱られたことがある、お漏らししないか心配で眠れないなどの強迫観念を取り除いてあげることです。
寝室環境の整備
認知症の人は、部屋が暗いと自分がどこにいるのか分からなくなってしまいます。これが不安につながりやすいため、照明をつけたままにすると安心するでしょう。1人で寝るのが不安な場合は、本人が寝付くまでそばにいてあげたり、背中をさすってあげたりすると落ち着きます。
薬の見直し
血圧降下剤や気管支拡張剤、抗がん剤など、持病の薬が不眠を招いていることもあります。医師に相談して、薬を変えてもらうことで不眠が改善されるかもしれません。