認知症による介護拒否の原因と対応、改善策
認知症による介護拒否とは
介護しようとしても、それを嫌がったり、全く言うことを聞いてくれなかったりする認知症の症状を「介護拒否」といいます。
介護拒否が見られる場面は、例えば薬を飲むのを嫌がる、お風呂に入りたがらない、着替えさせてくれないなどです。いずれの場合でも、家族などから世話されることを必要以上に拒みます。
ここでは、認知症による介護拒否の原因と対応方法について解説します。
認知症による介護拒否の原因
介護拒否の対応をする際には、その原因を探るのが改善への近道です。思い当たる原因があれば、ケアマネジャーと共有し、必要なケアプランを立ててもらいましょう。
苦痛を嫌がったり、体を触られたりすることを嫌がる
原因には個人差があります。介護されることに苦痛を伴ったり、体を触られることに嫌悪感を持っていたりするなど、介護を「とても嫌なこと」「不安なこと」だと思っている場合が多いでしょう。
自分の状態を認めたくない
自分を認知症だと認めたくないことから、介護されることを嫌がる方も少なくありません。
メリットや意義を忘れてしまっている
記憶障害などによって、「薬=病気を治すもの」「ヘルパー=助けてくれる人」だということを忘れてしまっているケースも考えられます。お風呂を嫌がるのであれば、ただ単に洋服を脱ぐことが嫌な場合もあれば、お風呂の気持ち良さを忘れてしまっている場合もあるでしょう。
嚥下障害など、身体に不調がある
食事を拒否するようならば、体調が悪いことはもちろん、飲み込みにくいなど嚥下障害が原因かもしれません。
認知症による介護拒否の対応方法
無理強いをしない
せっかく介護しようとしても、嫌がられてしまうとがっかりしたり、腹が立ったりしてしまうかもしれません。しかし、そこは我慢することが大切です。
怒ったり無理強いしたりすることは、逆に相手をかたくなにしてしまいます。それどころか、暴力をふるったり、物を投げつけられたりすることもあり大変危険です。
まずは落ち着くまで待つ
興奮しているときは無理に介護せず、しばらく落ち着くまで様子を見ましょう。
落ち着いたころを見計らって再度声を掛けてみると、案外すんなり受け入れてくれることもあります。
>>暴力・暴言の原因と対応
服薬に関しては医師に相談を
ただし薬に関しては、認知症の症状の悪化や命に関わることもあります。そのためなんとか飲んでほしいところですが、嫌がるときは飲ませても吐き出してしまうかもしれません。
どうしても飲んでくれない場合は、医師に相談してみてください。
認知症による介護拒否の予防法と改善策
介護拒否を防ぐ、あるいは改善するには、ケースごとに次のような方法が考えられます。
入浴拒否
入浴の前に「汗を流してさっぱりしましょう」「お風呂で温まりましょう」など声を掛け、お風呂に入ることで気持ちがよくなることを伝えます。
>>【漫画】認知症の方に入浴してもらうには?強要せずに引くことも大事
洋服を脱ぐことを嫌がる場合は、無理に脱がすと次回からさらに嫌がるかもしれません。
どうしても家のお風呂に入らないのであれば、デイサービスなど場所を変えてみるのも1つの方法です。
着替え拒否
無理強いすると暴力的になることも少なくありません。
拒否が見られる際には、着替えをそばに置いて放っておくとよいでしょう。また「背中にあせもができている」など、本人には見えない部分を持ちだして、見せてもらうふりをして着替えさせます。
食事拒否
食事を拒否する場合には、食べることに対して何か不都合なことがあるものです。
例えば歯が痛い、体調が悪くて食欲がない、口内炎ができている、入れ歯が合わない、飲み込みにくい、口の中が渇いているなど。まずは、これらを取り除いてあげることが予防につながります。
口腔ケアやできるだけ食べ物を柔らかくして、飲み込みやすくしたりも大切です。
>>高齢者の口腔ケアの目的と方法
また、施設への入居をきっかけに食事拒否が始まった場合には、環境変化によるストレスが考えられます。
環境になじむのを待ち、好物を差し入れてあげるといいでしょう。味付けや盛り付けなどが今までとあまりにも違うために、食べていないこともあります。そんな場合には、食習慣や好きな食べ物と嫌いな食べ物について、一度施設の方と話し合ってみるといいでしょう。