認知症の薬・メマリー(メマンチン)とは

認知症薬・メマリー(メマンチン)とはどんな薬?

アルツハイマー型認知症には残念ながら特効薬はありません。しかし、脳に作用して進行を抑制する薬がいくつかあります。メマリー(一般名:メマンチン)もそのひとつです。この記事では、メマリーの効果や飲み方、薬価などについて解説しています。ぜひご参考ください。

 

メマリー(メマンチン)とは

メマリー(メマンチン)とは?

メマリーとは、アルツハイマー型認知症治療薬のひとつです。メマンチン塩酸塩という成分が含まれています。ドイツに本社を置くMerz Pharmaceuticals GmbH(メルツ ファーマシューティカルズ)が開発したもので、2002年に欧州医薬品庁(EMA)、2003年に米国食品医薬品庁(FDA)より承認されています。世界各国で使用されており、日本では2011年6月に第一三共から発売されました。

中等度または高度のアルツハイマー型認知症の症状の進行を抑えるために用いられます。脳血管性認知症などの他の認知症には用いられません。

アルツハイマー型認知症の薬には他に、アリセプト(一般名:ドネペジル)、レミニール(同:ガランタミン)、イクセロンやリバスタッチ(同:リバスチグミン)があり、これらはメマリーと併用することができます。

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は三大認知症の1つで、最も罹患者の多い認知症です。記憶障害や時間・場所が分からなくなる見当識障害が初期のうちから現れます。進行するにつれて身の回りのことができなくなり、やがて立つ、座る、歩くなど基本的な運動動作もできなくなり、寝たきり状態となります。

超高齢化社会となっている日本では、今後もアルツハイマー型認知症は増加していくと考えられています。

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メマリー(メマンチン)の作用

メマリー(メマンチン)にはどのような作用があるか?

 

メマリーの効果や作用について詳しく見ていきましょう。

メマリーの効果

メマリーは、中等度または重度のアルツハイマー型認知症に特に効果を発揮する薬です。(いくつかの臨床試験により、軽度の認知症の方には有用性が低いことが示されています。)

怒りっぽさ、興奮、攻撃、徘徊といった行動・心理症状(BPSD)を軽減する効果も認められています。

認知症に作用する仕組み

脳内には記憶や学習に関連した神経伝達物質の役割をする、グルタミン酸というものがあります。グルタミン酸は、調味料にも使われている旨味成分なので聞いたことがある人もいることでしょう。

アルツハイマー型認知症が進行すると、このグルタミン酸の放出が過剰になり、脳の神経細胞を傷つけてしまいます。この考え方を「グルタミン酸仮説」と呼びます。

メマリーは、グルタミン酸の過剰な放出を抑えることで脳の神経細胞を守ります。

メマリー(メマンチン)のタイプと薬価

メマリー(メマンチン)のタイプと薬価とは?

 

メマリーの種類と薬価

メマリーには、錠剤と少量の水で飲めるOD錠、水に溶かして飲むドライシロップの3種類があります。用量ごとの薬価は以下の通りです。

5mg:1錠あたり134.7円

10mg:1錠あたり240.1円

20mg:1錠あたり429.5円

(いずれも同価格)

 

 ※2020年3月改定(第1版)添付文書情報を基にしています

保険が適用されるため、自己負担割合は所得に応じて1~3割です。

メマリー(メマンチン)の飲み方

メマリー(メマンチン)の飲み方とは

メマリーの基本的な飲み方は以下の通りです。用法・用量は患者ごとに異なりますので、必ず医師の指示を守って服用しましょう。

アルツハイマー型認知症の方

1日1回5mgから開始し、目標とする維持量(最大で1日20mg)を経口投与します。増量は1週間ごとに5mgずつです。

メマリーの注意点

飲み始めの時期には、めまいや傾眠が起こる場合があります。転倒などには十分注意が必要です。高齢者は転倒でケガをしたことをきっかけに、一気に要介護度が上がってしまうことがあります。

また、危険を伴う機械の操作は避けてください。自動車の運転をされている方は、メマリーの服用をきっかけに、運転免許の返納を考えるといいでしょう。

合併症や既往歴については、十分に医師に伝えておきましょう。てんかんまたはけいれんの既往がある方、尿細管性アシドーシス、重症の尿路感染などの尿pHを上昇させる因子がある方、腎機能や肝機能の障害のある方などは、特に注意が必要です。

また、ドパミン作動薬など併用に注意が必要な薬もあります。服用中の薬がある方は、医師や薬剤師に必ず伝えてください。

アリセプトなどとの併用が可能

メマリーは、グルタミン酸の過剰放出を抑える薬ですが、アリセプトなどのその他のアルツハイマー型認知症の薬は、アセチルコリンエステラーゼを阻害することで脳の神経伝達を助ける薬です。薬の効き方が違うため、この2種類の認知症の薬は併用可能です。

アリセプトは、軽度から重度のアルツハイマー型認知症の方に使われます。レミニールとイクセロンは、軽度と中等度のみです。メマリーは、中等度または重度の方に使用されるので、認知症の進行に合わせて薬の組み合わせが検討されることが多いです。

また、行動・心理症状(BPSD)によっても使い分けられます。

メマリー(メマンチン)の副作用

メマリー(メマンチン)にはどんな副作用があるか?

 

起こりえる副作用

メマリーで起こりえる副作用には次のようなものがあります。

  • めまいや頭痛
  • 便秘や食欲不振
  • 血圧の上昇
  • 肝機能異常

ごくまれにですが、けいれんや失神、精神症状(激越、妄想、幻覚など)といった重大な副作用が現れる場合があります。

副作用かもと思ったら

認知症の方は、副作用の症状を自覚したり訴えたりできないことも多いため、周囲の人がまめに声をかけたり、様子を観察したりと、気をつけてあげる必要があります。

変化が見られたら、主治医に報告をしましょう。

まとめ

メマリーは、過剰なグルタミン酸の放出を抑えて脳神経を守ることで、アルツハイマー型認知症の症状の進行を抑える薬です。怒りっぽさや徘徊などの行動・心理症状(BPSD)の改善も期待できます。軽度の方にはあまり効果は期待できず、中等度から重度の方に用いられます。

アリセプトなどの他の認知症治療薬と併用することも可能です。認知症の進行や行動・心理症状(BPSD)によって併用されたり使い分けられたりしています。

飲み始めの頃にはめまいや傾眠が起こる場合があるので、転倒には十分注意しましょう。認知症の方は体調の変化を訴えられないことがあるので、副作用の症状が現れていないか観察や声掛けを行ってください。

認知症の進行予防は、薬でしかできないわけではありません。デイサービスで外出機会を増やしたり、デイケアの認知症短期集中リハビリテーションを利用したりといった対策を、ケアマネジャーと検討してみてはいかがでしょうか。

認知症は早期に発見して治療をすることで、症状の進行を遅らせることが可能です。「もしかしたら」「何かがおかしい」と感じたら、かかりつけ医や専門医などに相談をしてください。

※この記事は2020年5月時点での情報を基に作成しています

監修者:春田 萌

日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会所属
15年目の内科医師です。大学病院、総合病院、クリニックでの勤務歴があります。訪問診療も経験しており、自宅や施設での介護についての様々な問題や解決策の知識もあります。