傾眠とはどんな症状でしょうか?傾眠になる原因や対策、注意点を知りたいです。

質問

質問者同居している高齢の母は特に身体の悪いところがないのですが、昼間でもよくうつらうつらとしています。家族は「年寄りだから」と気にしていなかったのですが、最近「傾眠」ということばを知り、あまり良くない状態ではないかと心配になりました。「傾眠傾向」とはどういうものでしょうか。原因は何ですか?「傾眠」になったときには無理にでも起こした方が良いのでしょうか。またなるべく「傾眠傾向」にならない方法があれば教えてください。

 

専門家

高齢者が縁側でうつらうつらしているような様子は、高齢者を表すイメージとしてよく見られます。刺激ですぐに覚醒するような居眠りの状態は傾眠と呼ばれ、高齢者では珍しくない現象です。しかし傾眠を起こす原因によっては、体調面などに問題がある場合もあります。放置することで、症状が重くなる可能性も考えられます。

ここでは高齢者の傾眠を引き起こすその原因と、家族として気をつけたいことや対応について解説していきます。

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傾眠とは?

傾眠とは?

高齢者に多く見られるという傾眠とは、どのようなものなのでしょう。通常の居眠りと区別する必要は、あるのでしょうか。

傾眠はただの居眠りじゃない?

「高齢者はよく居眠りをする」思われがちですが、ここで取り上げる「傾眠」はただの居眠りではありません。

傾眠とは意識障害のひとつであり、何らかの病気が原因となっている場合もあります。

意識障害にはその意識レベルによって、4段階に分けられています。

正常の状態から順に、傾眠・混迷・昏睡と次第に低下の度合いが高くなります。

  1. 意識清明:正常な状態です。問いかけに正しく反応します。
  2. 傾眠:肩に軽く触れるなどの軽度の刺激で目を覚まし、そのときには反応がありますが、すぐにまたうとうとと眠りに落ちます。
  3. 混迷:大きい声での呼びかけや身体をたたくなど、強度の刺激でないと意識が戻らない状態です。刺激に対して手を振り払うなどの動作をします。また「口を開けてください」などの簡単な呼びかけに応じることもあります。
  4. 昏睡:手足の自発的な動きがまったく見られません。痛みなどの刺激にも反応がない状態です。

高齢者のうたた寝は一般的にもよく見られるものですが、日中にたびたび起こるようであれば、傾眠傾向を疑ってみる必要があります。

傾眠を放置するのは危険?

傾眠の場合、覚醒した後に注意力を失ったり、無気力になったりする場合もあります。

身体のコントロールがうまくできず、ふらつきなどで転倒する可能性もあるので、注意しなければなりません。

また傾眠状態のままで食物や水を口に入れると、誤嚥する危険性が高まります。

無気力傾向が生じると水分や食事を取らないなど、脱水症状や栄養不足につながる恐れも出てきます。

うとうとする様子が頻繁に見られるようなら放置をせずに、慎重に見守りながら対策をしていく必要があります。

傾眠が進行するとどうなるの?

傾眠では錯覚や妄想、せん妄の状態を見せることもあります。傾眠が進行するにつれて、そうした言動が起こる可能性も否定できません。

また傾眠傾向が続くと不活発な生活になり、筋力低下につながっていくことも考えられます。これまで活動的だった人が「最近は外出もせずに眠り込むことが多い」というときは、特に気をつけましょう。

傾眠の原因

傾眠の原因



軽度の意識障害である傾眠。傾眠が起こる原因について見ていきましょう。

傾眠の主な原因

傾眠の主な原因には、以下のようなものが挙げられます。

認知症

認知症の症状のひとつに周囲の物事に関心がなくなり、全般的に意欲を失う無気力状態(アパシー)があります。無気力になると、脳が興奮状態になることが少なくなり、傾眠傾向が強くなります。

加齢

つけ 特に大きな原因がなくても、年齢とともに自然に傾眠が増えるということもあります。夜の眠りが浅く、昼夜が逆転して日中の眠気が取れない場合も考えられるでしょう。

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脱水症状

体内の水分不足も傾眠の原因となります。脱水状態は脳や全身の機能の働きを悪くし、傾眠を引き起こします。高齢になると、若い頃に比べて体内に水分を保つ力が弱くなります。のどの渇きを感じる感覚も鈍るため、水分不足になる傾向があります。

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内科的疾患

身体のどこかに疾患があり、それが原因で傾眠が起こることもあります。微熱が続いている、体内で炎症が起きているなどで傾眠が誘発されている場合もあり得ます。

慢性硬膜下血腫

何かのはずみで頭を打ち付けて血管が傷つき、脳と硬膜の間に血腫ができたことが傾眠の原因となる場合があります。高齢者は血管がもろく、軽く頭をぶつけても硬膜下血腫が生じやすくなる傾向があります。

薬の副作用

薬によっては、眠気を感じる成分が含まれているものもあります。普段飲んでいる薬が、傾眠の原因となっていることも考えられます。

食事性低血圧にも注意

若い人でも食後は多少、眠気を感じたりだるくなったりしますが、症状がひどい場合には食事性低血圧という可能性もあります。

食事性低血圧は、パーキンソン病やアルツハイマー病、脳血管障害、高血圧、糖尿病、また高齢などが原因となり発症します。

また降圧薬・利尿薬の服薬者にも多く見られます。

食事性低血圧の場合、食事そのものがひきがねとなって急激な血圧低下を招きます。

症状の緩和のためには、炭水化物の摂取量を減らすなどの食事内容の見直しや、時間をかけてゆっくりと食べるといった対策が必要です。

傾眠の傾向が見られた場合の対策

傾眠の傾向が見られた場合の対策

傾眠と思われる場合には、放置をせず家族としての対策が求められます。家族ができる対応を、見ていきましょう。

医師に相談する

高齢者の傾眠が疑われる場合には、その症状について医師に相談することが大切です。

もっとも心配なのは、内臓疾患などの病気から生じている可能性です。その場合には、元となる病気の治療により、傾眠傾向が消えることもあります。

また薬の副作用による傾眠の場合も、処方を変更してもらうなどの対策によって改善できる場合があります。

こまめに水分補給を促す

先にも見たように、高齢者は脱水になりやすく、それが原因の傾眠もあります。

家族が声をかけ、こまめに水分補給をするように促していきましょう。

午前中に水分を摂取することで、日中の覚醒効果が期待できます。

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見守りとケア

意志に相談して特に不安材料が見当たらず、高齢によるものと判断できる場合には、転倒や誤嚥に気を配りながら家族で穏やかに見守るようにします。

日中になるべく活動できるように散歩に連れ出したり、家族で体操したりするなども傾眠を減らすことにつながります。

食欲低下で栄養不足になると、さらに脳の働きが衰える原因となります。食事内容に注意し、十分な栄養が摂取できるように配慮しましょう。

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傾眠についての注意点

傾眠についての注意点

傾眠が見られる場合の、対応のポイントを見ていきましょう。

傾眠について知る

「高齢だから」と放置せずに、傾眠という症状について理解しておかなければなりません。

ただの居眠りと考えていると、意識障害が進むなど、悪化する恐れもあります。

食事中にも傾眠傾向があるときには、誤嚥の危険があるため特に注意が必要です。

焦らず気長に対応する

傾眠傾向であると判断された場合でも、ピリピリせず気長に対応することを意識します。

家族が焦ったりむやみに起こそうとしたりすると、本人も落ち着いて生活できなくなります。

状況を受け入れ、医師の指示に従って対応していきましょう。

可能な対策を実施する

傾眠について、家族で何ができるのか一度整理して考えておくと良いでしょう。

家族みんなでこまめに声をかける、毎日決まった時間に水分補給を促す、天気の良い日には一緒に散歩に出かけるなど、傾眠対策でできることは限られていますが、地道な積み重ねが重要です。

できるだけ夜間にぐっすり眠れるように、入浴時間を変更したりアロマを炊いたりするなど、小さな工夫が思わぬ効果を生むこともあります。

当たり前と思わずに傾眠について考えよう

当たり前と思わずに傾眠について考えよう

うたた寝するのは、高齢者の典型的な姿のように思われがちです。しかし傾眠にはさまざまなリスクがあります。内科的な疾患がないか、活動が急激に低下していないかなど、原因となる要素を探る必要があります。素人判断をせずに医師に相談し、生活へのアドバイスを仰ぎましょう。健康に暮らしていけるよう、家族みんなでサポートとしていくことが求められます。

 ※この記事は2020年2月時点の情報で作成しています。

 

監修者:寺岡純子

監修者:寺岡純子(てらおか じゅんこ)

主任介護支援専門員 看護師
合同会社 カサージュ代表
看護師として病院勤務8年、大手介護事業者で約19年勤務し管理職を経験。
2019年8月合同会社カサージュを立ち上げ、「介護特化型研修事業」「介護離職低減事業」など介護に携わる人への支援を行っている。企業理念は「介護に携わるすべての人の幸せな生活をサポートする」。

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