認知症の方に処方されることも多い“リスパダール(リスペリドン)”は、ベルギーに本社のある製薬会社ヤンセンファーマが、1984年に開発した薬です。
1996年4月には、日本でも統合失調症に用いる薬として承認されていますが、それ以外の精神症状でも処方されており、認知症の方に処方されることも少なくありません。
主な種類と薬価
リスパダールは大きく分けると以下のタイプに分けられます。
・錠剤(0.5mg/1錠:17.00円)
・錠剤、OD錠 (1mg/1錠:31.90円)
・錠剤、OD錠 (2mg/1錠:56.60円)
・錠剤、OD錠 (3mg/1錠:79.30円)
・細粒(1%/1g:276.40円)
・内用液(0.1%/ml:90.30円)
※OD錠とは、唾液程度の少量の水で飲みこめる錠剤のことです。
他にも「リスパダ-ルコンスタ筋注用」という、1回の注射で効果が2~4週間続く、持続性のものもあります。
リスパダールの服用
成人であれば1日2回(1mg/回)から始めるのが一般的です。
ただし、年齢や症状に合わせた量が処方されるので、必ずしもこの限りではありません。
1日の服用総量が12mgまで医師の判断で少しずつ増量できますが、それを超えてはいけません。致死量に至るまでリスパダールを服薬することは現実的ではありませんが、過剰服薬(OD)すると眠り込んでしまうことがあります。飲んだことを忘れて何回も薬を飲んでしまう方には注意が必要です。
リスパダールの副作用
リスパダールは副作用の少ない第2世代と呼ばれる薬剤です。
だからと言って副作用が全くないわけではありません。服用中にこんな症状が出てきたら、かかりつけ医に相談しましょう。
・錐体外路症状(筋緊張や運動が過剰もしくは減退する症状)
・アカシジア(下肢がむずむずしてじっとしていられない症状)
・不眠
・便秘
・排尿困難
・めまい
・血圧低下による立ちくらみ
・眠気
・口が渇く
・動悸
・体重増加など
介護専門家が指摘する注意点
安心介護内に寄せられた専門家のアドバイスの中から、リスパダールの注意点を紹介します。
【注意点1】勝手な投薬中止や量の増減をしない
どんな薬でも自己判断で投薬中止や量の増減をしてはいけないものです。
リスパダールでも重い副作用=“悪性症候群”が出る可能性があります。
レビー小体型認知症という病気は「薬剤過敏性」が特徴でもあります。
もし、今のお薬で折り合いが付いているのであれば、治療を変えるべきではないと思います。(中略)
あと注意して欲しいのが「自己判断での向精神薬の調整」です。
長い間飲んでいる薬の量を素人判断で急に減らしたり、増やしたりすると「悪性症候群」という副作用が出る可能性があります。重篤なものですので十分に気をつけてくださいね。(専門家による回答)
引用元 介護のQ&A医師との関わり方について」
この“悪性症候群”というのはどういった症状なのでしょうか?
“悪性症候群”とは、向精神薬の服用によって起こる可能性がある重い副作用のことです。
筋肉の引きつり、嚥下困難、頻脈、発汗、高熱などを引き起こします。
こういった兆候が出てきたら、早めにかかりつけ医にご相談ください。
【注意点2】慎重に薬の効果を見極める
リスパダール(散剤)を処方されたことで一時は症状が安定したものの、2週間ほどでまた元の状態に戻ってしまったという相談には、こんなアドバイスが投稿されています。
あれは本当に不思議なくらい、とても不穏な方がピタッと穏やかになられるほどに効果的ですね。でも、効かない方には効かなかったり、効きすぎてくったりとしてしまった方もありました。
やはり精神薬ですから、そのこ効果は人それぞれに違います。
服用されてどれくらいですか。服用は一日に何回ですか。
お医者様も、まずは症状とともに患者さんの体重等からその量を算定します。精神科薬は、一発で適量がわかるものではありません。
数週間、服薬したときの様子をみて、医師にその様子を伝えながら服薬の内容を変更したりしながらその方に合った処方をみつけていくものです。ホームの職員さんから、その医師にそのあたりの様子が伝わっているでしょうか。
ちょっと確認してみてください。(専門家とすかーなっちさんの回答)
引用元 介護のQ&A 「リスパダールの効果について」
確かに、これは目に見えて効果が現れる薬だなと思います。ただ、服薬量が難しく、ほんのちょっとした違いで、症状が違います。効きすぎると無気力、失禁、動作緩慢などありますし、他の認知症薬との兼ね合いも難しいようです。
2週間ほどで効果がなくなったとのことですが、これに関してはもう少し様子を見られたらいかがですか。高齢者の場合、薬の作用がなくなるまで時間がかかりますし、確かに日によって変動もあると思うので。現在、緊急避難的にリスパダールを服薬しているのはよいと思いますが、これを増やしていくというのは、主治医の判断もありますが、慎重にされた方が良いと思います。(専門家 mugcupさんによる回答)
引用元 介護のQ&A 「リスパダールの効果について」
【注意点3】医師によっては処方を避ける場合も
リスパダールについては、入居中の施設の医師と主治医との間で意見が分かれることもあるようです。
その理由を介護専門家はこのように説明しています。
リスパダールは、ドーパミンレセプターの阻害作用が強力なため幻覚や妄想に対してより効果が期待できる薬で鎮静効果もあり、そういう症状を示す方には使うこともあります。ただ、高齢者の方に対しては、嚥下機能の低下(薬剤性パーキンソン症状)に注意が必要となります。
一般的に抗精神病薬は、認知症の症状に対して厚生省が認可した適応を持つものはありませんので、認知症専門医は慎重に処方しますし、本人家族に了解を得る必要があります。
(専門家 alfa159swさんによる回答)
引用元 介護のQ&A 「認知症の薬について グラマリールとリスパダールの違い」
【注意点4】大量のよだれが出る場合も
服用後から「よだれが多く、洋服から下着までびしょ濡れの状態」になり、本人が着替えを嫌うことから不衛生だと頭を悩ませている方からの相談もありました。
大量のよだれは、リスパダールの副作用なのでしょうか?
口をもごもごと動かされたりはしておられますか?
オーラルディスキネジアという症状かとも思いました。
リスパダールの副作用なのかもしれません。(専門家 いのきぶんいちさんによる回答)
引用元 介護のQ&A 「リスパダールの副作用?よだれが大量に出ます」
他の専門家も大量のよだれを副作用だと考えているようです。
また、よだれ対策にはこんなアドバイスがありました。
最近は、大人用のバンダナタイプのよだれかけや、
シャツタイプのエプロン等、おしゃれな物がありますよ。
見た目はシャツですが、着け外しが、首の後ろで
マジックテープになっているので簡単です。(専門家 優優優さんによる回答)
引用元 介護のQ&A 「リスパダールの副作用?よだれが大量に出ます」
介護が介護する側・される側にとって1つ1つの介護に時間がかかったり、見た目がおしゃれじゃなかったりするとストレスを感じてしまいます。
少しでも取り換えが簡単で見た目がいいものがあるなら、そちらを使うとお互いにストレスを感じなくて済みそうですね
【注意点5】糖尿病の方は要注意
リスパダールの服用で血糖値が変動する場合があります。
糖尿病を患っている人や発症リスクのある人は、十分に注意する必要があるといえるでしょう。
その他にも「これって副作用?」と思うような症状が出たら、どんな些細な事でもすぐに主治医へ相談するようにしてください。
認知症で使用する際の注意点
リスパダールの添付文書には、認知症で使用する際の注意点が書かれているので紹介します。
外国で実施された認知症に関連した精神病症状(承認外効能・効果)を有する高齢患者を対象とした17の臨床試験において、本剤を含む非定型抗精神病薬投与群はプラセボ投与群と比較して死亡率が1.6〜1.7倍高かったとの報告がある。また、外国での疫学調査において、定型抗精神病薬も非定型抗精神病薬と同様に死亡率の上昇に関与するとの報告がある。
(引用元:KEGGデータベース)
認知症でリスパダールを服用する際には、メリットとデメリット、そしてリスクを医師と話し合うといいでしょう。
(画像出典元:ヤンセンファーマ2006年10月3日付プレスリリース)
※この記事は2015年10月時点の情報で作成しています。