認知症の薬・(ドネペジル)とは

認知症薬のアリセプト(ドネペジル)とはどんな薬?

アリセプト(一般名:ドネペジル)は、脳に作用して認知症の症状の進行を抑制する薬です。アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の方に処方されます。この記事では、アリセプトの効果や飲み方、薬価、ジェネリック医薬品、副作用などについて解説しています。ぜひご参考ください。

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アリセプト(ドネペジル)とは

アリセプト(ドネペジル)とは

アリセプトとは、エーザイ株式会社が開発し1999年に世界で初めて認可された、アルツハイマー型認知症の治療薬です。2014年にはレビー小体型認知症の治療薬としても認められました。一般名はドネペジル塩酸塩といいます。特許が切れているので、有効成分や品質、安全性などが等しくて低価格なジェネリック医薬品(後発品)を選ぶことも可能です。脳血管性認知症といった他の認知症には適応がありません。

アルツハイマー型認知症の薬には他に、メマリー(メマンチン)、レミニール(ガランタミン)、イクセロンやリバスタッチ(リバスチグミン)があります。メマリーのみアリセプトと併用することが可能です。

アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は三大認知症の1つで、最も罹患者の多い認知症です。記憶障害や時間・場所が分からなくなる見当識障害が初期のうちから現れます。進行するにつれて身の回りのことができなくなり、やがて立つ、座る、歩くなど基本的な運動動作も失われていきます。

超高齢化社会となっている日本では、今後も増加していくと考えられている認知症です。

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レビー小体型認知症とは

こちらも三大認知症のひとつです。比較的早く進行していきます。

認知機能が保たれている初期のうちから幻視が現れてくること、75%に睡眠や覚醒の障害が起こることが特徴です。また、パーキンソン病に非常によく似た症状も起こります。

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アリセプト(ドネペジル)の作用

アリセプト(ドネペジル)の作用とは

アリセプトの効果や作用について詳しく見ていきましょう。

アリセプトの効能

アリセプトは、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の症状の進行を抑制する治療薬です。

アルツハイマー型認知症の方に対しては、高度の方にも一定の効果が期待できますが、中等度までであれば有効率は20~30%になり、数ヵ月から1年ほど前の状態への回復が見込めます。

具体的には、会話がスムーズになる、落ち着きが見られる、手順を整える機能が改善されるので簡単な食事の準備などができるようになるなどの効果が現れます。

認知症に作用する仕組み

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の方は、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンが減少しています。アリセプトは、アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼという酵素の働きを阻害して、脳内のアセチルコリンを増加させることで、記憶障害などの認知症の症状が改善されるのです。

この仕組みから、アリセプトはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とも呼ばれています。

アリセプト(ドネペジル)のタイプと薬価

アリセプト(ドネペジル)のタイプと薬価

アリセプトの種類と薬価

アリセプトには、錠剤と細粒のほかに少量の水で飲めるOD錠、水に溶かしたりそのまま飲むこともできるドライシロップ、嚥下障害がある方にも飲みやすい内服ゼリー剤の5種類があります。用量ごとの薬価は以下の通りです。

3mg:1錠あたり161.3円

5mg:1錠あたり237.7円

10mg:1錠あたり419.6円

 

※2017年5月改定(第23版)添付文書情報を基にしています

 

保険が適用されるため、自己負担割合は所得に応じて1~3割です。

アリセプト(ドネペジル)の飲み方

アリセプト(ドネペジル)の飲み方とは

アリセプトの飲み方は以下の通りです。用法・用量は患者ごとに異なりますので、必ず医師の指示を守って服用しましょう。

アルツハイマー型認知症の方

経口にて服用する薬です。1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgに増量します。高度のアルツハイマー型認知症の方では、さらに4週間以上5mgを服薬して10mgに増量します。症状によって適宜減量されます。

レビー小体型認知症の方

経口にて服用する薬です。1日1回3mgから開始し、1〜2週間後に5mgに増量します。その後4週間以上5mgを服薬して10mgに増量します。増量した後は、症状によって5mgまで減量する場合もあります。

メマリーとの併用が可能

アリセプトやレミニール(ガランタミン)、イクセロンやリバスタッチ(リバスチグミン)などのアルツハイマー型認知症の薬は、アセチルコリンエステラーゼを阻害することで脳の神経伝達を助ける薬です。一方で、メマリーにはグルタミン酸の過剰放出を抑える作用があります。同じ作用の薬を2種類併用して服用することはできませんが、アリセプトとメマリーは薬の効く仕組みが違うため併用が可能です。

メマリーは中等度または重度の方に使用されるので、認知症の進行に合わせて薬の組み合わせが検討されることが多いです。また、行動・心理症状(BPSD)によっても使い分けられます。

アリセプトの注意点

意識障害やめまい、眠気などが現れることがあるので、自動車の運転は避けましょう。

合併症や既往歴については、十分に医師に伝えておきましょう。心疾患(心筋梗塞、弁膜症、心筋症等)や電解質異常(低カリウム血症等)のある方などは、特に注意が必要です。

また、レビー小体型認知症では、パーキンソン病のような症状(錐体外路障害)が現れたり、悪化したりする可能性があるので注意が必要です。

アリセプトとジェネリック薬品の違い

アリセプトとジェネリック薬品の違いとは

1999年にエーザイから発売されたアリセプトは、2010年以降ジェネリック医薬品(後発品)が発売されています。

ジェネリック医薬品とは、先発品の特許が切れたあとに販売されたもので、国が有効成分や安全性などが同等だと認めた薬です。開発費などがかかっていない分、低価格で提供されます。効き目や品質などに違いはありませんが、飲みやすさなどが工夫されているものもあります。

アリセプトのジェネリック医薬品は、共和薬品工業、沢井製薬、東和薬品などから出ているので、希望する方は医師または薬剤師にお伝えください。

レビー小体型認知症への適応について

アリセプトのジェネリック医薬品は、販売当初はアルツハイマー型認知症に対してのみ適応が承認されており、レビー小体型認知症の方はジェネリック医薬品を選ぶことができませんでした。

2019年3月以降からは、ジェネリック医薬品でレビー小体型認知症への適応の追加承認を得る製造販売元が増え、現在では日本薬品工業、共和薬品工業、寿製薬、ニプロ、沢井製薬、東和薬品、日新製薬、陽進堂などが、追加承認を得ています。

アリセプト(ドネペジル)の副作用

アリセプト(ドネペジル)の副作用とは

アリセプトでは、どのような副作用に注意が必要なのかを確認しておきましょう。

起こりえる副作用

副作用で一番多いのは、食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢などの消化器症状です。腹痛や便秘などが起こることもあります。特に飲み始めや増量時に注意しましょう。

パーキンソン病のような症状(錐体外路障害)が現れることもあります。特にレビー小体型認知症の方は発現率が高くなります。

ごくまれにですが、失神や心臓突然死の原因となるQT延長、肝機能障害、てんかんや痙攣などの重大な副作用も現れることがあります。

副作用かもと思ったら

認知症の方は、副作用の症状を自覚したり訴えたりできないことも多いため、周囲の人がまめに声をかけたり、様子を観察したりと気をつけてあげる必要があります。

変化が見られたら、主治医に報告をしましょう。

まとめ

アリセプトは、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の症状の進行を抑える薬です。アルツハイマー型認知症では、軽度から高度の方まで適用されますが、特に中等度までの方に効果が期待できるといわれています。また、同じ働きをするアルツハイマー型認知症の治療薬とは併用できませんが、メマリーとは併用可能です。

副作用として消化器症状が起こる場合があります。認知症の方は体調の変化を訴えられないことがあるので、観察や声掛けを行ってください。

認知症の進行予防は、薬でしかできないわけではありません。デイサービスで外出機会を増やしたり、デイケアの認知症短期集中リハビリテーションを利用したりといった対策を、ケアマネジャーと検討してみてはいかがでしょうか。

認知症は早期に発見して治療をすることで症状の進行を遅らせることが可能です。「もしかしたら」「何かがおかしい」と感じたら、かかりつけ医や専門医などに相談をしてください。

※この記事は2020年5月時点での情報を基に作成しています

監修者:春田 萌

日本内科学会 総合内科専門医、日本老年医学会所属
15年目の内科医師です。大学病院、総合病院、クリニックでの勤務歴があります。訪問診療も経験しており、自宅や施設での介護についての様々な問題や解決策の知識もあります。