コグニサイズとは?頭と身体を動かして認知症を予防しよう

頭と体を動かす認知症予防 コグニサイズとは?

コグニサイズとは、頭の体操と運動を一緒に行うことで認知機能の維持や改善を目指すものです。自宅でも教室でも、ひとりでもグループでも行えます。この記事ではコグニサイズのポイントややり方、あわせて知りたいコグニライフについてまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

 

コグニサイズとは

コグニサイズとはどんな運動?

コグニサイズとは、頭を使いながら同時に身体を動かす運動です。2つの作業を同時に行うことで、認知症予防や軽度認知障害(MCI)の方々の認知機能の維持・向上の効果が期待できるといわれています。英語のコグニション(認知)とエクササイズ(運動)を組み合わせてコグニサイズと名付けられました。

国立長寿医療研究センターが開発したもので、誰でもどこでもできるという手軽さから、様々な自治体が高齢者の健康寿命を延ばす取り組みとして活用しています。

脳トレとの違い

認知症を予防する効果があるといわれているものに「脳トレ」があります。計算やパズルなどをして脳を働かせると、脳にたくさんの血液が流れ、アルツハイマー型認知症などの原因となる脳の萎縮を遅らせることができると考えられており、認知症の予防を目的に、多くのデイサービスやデイケアで脳トレは取り入れられています。

コグニサイズと脳トレは全くの別物!というわけではありません。脳トレでは机に向かって、頭を働かせながら課題に取り組みますが、コグニサイズでは身体を動かしながら取り組みます。

コグニサイズが認知症予防に効果的な理由

コグニサイズはなぜ認知症予防に効果的なのか

 

なぜ、頭と身体を同時に使うコグニサイズは、認知症予防や軽度認知障害(MCI)の方々の認知機能の維持・向上に効果的だといわれているのでしょうか。

身体の活動量を高く保てる

認知症のリスクのひとつが、身体活動量の低下や歩く速度が遅くなるなどの身体機能の低下です。運動だけではなく、日常生活の活動も含めて身体活動量を高く保つことで、認知機能の向上や脳の萎縮を抑制できることが報告されています。

とくに認知症になるリスクの高い軽度認知障害(MCI)の方は、一定の割合で認知機能が正常に戻ることが確認されているので、ぜひ予防のためにも積極的に身体を動かして身体活動量を高く保ちたいものです。

脳を刺激するから

コグニサイズでは、運動をしながらよく考えないと達成できない課題に挑戦することで、脳の萎縮の進行が抑えられ、記憶力の改善といった効果が期待できます。

間違えたら大笑いすることもポイント

コグニサイズで取り組むのは、簡単に達成できる課題ではありません。間違えたら仲間と笑いながら楽しむことも、脳や身体にプラスの効果を与えてくれます。

ただし、コグニサイズをしていれば、認知症が予防できるというわけではありません。食生活や睡眠、ストレスの軽減など、健康的な生活を送ることも大切です。

コグニサイズのやり方

コグニサイズのやり方とは

 

それでは、コグニサイズのやり方を見ていきましょう。

効果的なコグニサイズのやり方

コグニサイズには、厳密なルールはありません。軽く息がはずんで脈拍数が上昇する運動と、頭の運動になる課題を組み合わせましょう。もちろん、車いすのままでも行うことができます。

課題については、通常ではできるけれど、運動と一緒に行うことで時々間違えてしまう程度が理想です。頭で迷ってしまっている間も、身体は動かし続けてください。自分にはどんな運動とどんな課題が適しているのかを考えることも、頭のトレーニングになります。

短い時間でも毎日決まった時間に行って、運動の習慣化を目指しましょう。最低でも 週に3回、6ヵ月以上の継続を目標にしてください。

コグニサイズ例:コグニステップ

  1. 頭の体操は「1,2,3,4,5・・・」と合わせて声を出して数えます。この時、“3の倍数” の時だけ声を出さずに手をたたきましょう。「1,2, パチ(手を叩く),4,5, パチ(手を叩く)」という感じです。
  2. エクササイズは、「右足右→右足戻す→左足左→左足戻す」をリズムよく繰り返します。
  3. これを同時にやってみましょう!

コグニステップの方法

 引用元:国立長寿医療研究センター 

コグニサイズ例:コグニウォーク

  1. 正しい姿勢でウォーキングを行います。
  2. いつもよりも大股で歩きながら、しりとりや計算をしてみましょう。

コグニウォークの方法

引用元:国立長寿医療研究センター 

慣れてきて間違えなくなってきたら、次の課題に移りましょう。

安全に行うために注意したいこと

コグニサイズに挑戦する際に気を付けたいのは、無理をしないこと! 安全で効果的なトレーニングを行うためにも、以下のことに注意しましょう

【準備】

  • ストレッチをして身体を暖めてからスタートしましょう

【コグニサイズ中】

  • 水やスポーツ飲料などで水分を補給してください
  • 痛みを感じたら我慢せずに休息を
  • ふらつきそうなときには何かにつかまるなど、転倒には注意しましょう

コグニサイズをやってみよう!

コグニサイズを実践しましょう

 

動画を見ながらコグニサイズ

コグニサイズは複数でもひとりでもできます。ひとりで始める時には、動画を見ながら行うとわかりやすいでしょう。

マーチでポン

まずは初級編です。

www.youtube.com

引用:読売新聞オンライン動画 

マーチと引き算

マーチでポンに慣れてきたら、次の段階に移りましょう。

www.youtube.com

引用:読売新聞オンライン動画  

動画では「4歩ごとに3を引きながら行進を続ける」という方法を紹介しています。

体を動かしながら、少し迷ってしまうぐらいの計算をするのがいいので、初めは簡単な計算から始め、慣れてきたら「300から11を引いていく」などレベルアップするといいでしょう。

ステップでポン

より頭と身体を使う運動です。

www.youtube.com

引用:読売新聞オンライン動画

座ったままできるコグニサイズも

コグニサイズは座ったまま行ってもかまいません。福島県須賀川市が公開しているコグニサイズを見てみましょう。

www.youtube.com

引用:須賀川市公式チャンネル

グループでも楽しめます

コグニサイズはグループで行っても楽しい運動です。家族や友人が集まった際に行ってみてください。

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引用:PrefKagawa 香川県インターネット放送局

『ちょっとみてみまい』 動画では3人で行っていますが、2人や4人以上でも構いません。

書籍や教室の利用も

コグニサイズは、多くのデイサービスやデイケアで活用されているほかに、コグニサイズ教室を実施している自治体やサークルなどがあります。

お住まいの地域のコグニサイズ教室については、ケアマネジャーや地域包括支援センターに問い合わせてみてください。 また、コグニサイズに関する書籍も出ているので、そちらを参考にしてもいいでしょう。

コグニライフという考え方も

コグニライフという考え方も。

コグニサイズは、コグニション(認知)とエクササイズ(運動)を組み合わせた言葉です。ここから一歩進んで、認知活動を活性化するライフ(生活)を目指す、コグニライフという考え方が誕生しています。

国立長寿医療研究センターの島田裕之先生が提唱するコグニライフのポイントを、ふくおかインターネットテレビで紹介された内容から紹介します。認知症予防に早すぎることはありません。介護家族の方もぜひ生活に取り入れてみてください。

計算ウォーキング

歩くときには正しい姿勢で、少し息が上がる程度のペースで歩きましょう。普段よりも足を一歩前に出し、歩幅を広げるように意識するとより効果的です。歩きながら目についた車のナンバーを足していきましょう。例えば、「1147」であれば「1+1+4+7=13」などです。

一筆書きショッピング

一筆書きショッピングとは、一筆書きを描くようにお店を回って買い物を完了する方法です。あらかじめ買うものを考えて頭の中で記憶しておき、お店の配置を考えて後戻りしないように作戦を練りながら買い物をしていくので、ゲームのように日常の買い物を楽しむことができます。

インターバル掃除

まずは掃除にかける時間を決め、やることごとに時間を割り振り、効率を考えて時計を考えながら掃除を行います。例えば「片付け10分、掃除機かけ10分、窓ふき10分」などです。時間内にやり終わらなくても次の工程に進むのがポイントです。やり残してしまったことを覚えて起き、後で片づけましょう。

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引用:ふくおかインターネットテレビ

まとめ

コグニサイズは、頭の体操と息が上がる程度の運動を組み合わせたものです。コグニサイズで大切なのは、楽しみながら身体と脳を一緒に使い、運動を習慣化することです。誰でもどこでも行うことができ、明確なルールはありません。立ってでも座ってでも自由に楽しめるので、介護者は立ち、要介護者は座ったままで一緒に取り組んでもいいでしょう。

動画や書籍、近隣のコグニサイズ教室などを活用して、楽しみながら継続してください。

また、コグニライフという考え方もあります。認知症予防は、早すぎるということはありません。介護家族も要介護者と共に取り組んでみてはいかがでしょうか。

※この記事は2020年5月時点の情報をもとに作成しています。

監修者:陽田 裕也
陽田 裕也 (ひだ ゆうや)

2001年、介護福祉士養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得し特別養護老人ホームにて介護職員として勤務する。
その後、介護支援専門員や社会福祉士も取得し、介護以外でも高齢者支援に携わる。現在はソーシャルワーカーとして、 特別養護老人ホームで勤務しており、高齢者虐待や身体拘束、成年後見制度などの権利擁護について力を入れて取り組んでいる。