介護療養型医療施設(介護療養病床)とは? 費用や対象者、サービス内容を詳しく解説

介護療養型医療施設(介護療養病棟)のイメージ
介護をしている家族の負担は大きくなるものです。医療的ケアの手厚い施設で長期的な療養を考えている方にお勧めなのが、介護療養型医療施設(介護療養病床)です。本記事では、そのサービス内容や対象者、費用などについて解説しています。ぜひご確認ください。

目次

介護療養型医療施設(介護療養病床)とは?知っておきたい基本ポイント

介護療養型医療施設の居室イメージ

介護療養型医療施設(介護療養病床)の基本ポイントを確認していきましょう。

医療サービスが必要な方が長期療養できる施設

介護療養型医療施設(介護療養病床)とは、病状が安定しているものの、胃ろうなどの経管栄養やインスリン注射、たん吸引、カテーテルなどの医療的ケアが必要という方を対象とした施設です。長期にわたる療養が可能で、食事や排せつなど日常生活上の介護、医療的なケアやリハビリテーションなどのサービスを提供しています。ターミナルケアや看取りの対応も可能です。介護療養型医療施設には、認知症に対応している老人性認知症疾患療養病棟もあります。

有料老人ホームとは異なり、介護保険が適用される公的な施設です。入所時に支払う初期費用もありません。ただし、すでに廃止が決まっており、2012(平成24)年からは新設が認められなくなりました。現在ある介護療養型医療施設(介護療養病床)の多くは、介護老人保健施設(老健)や介護医療院への転換を図っています。

介護療養型医療施設(介護療養病床)では、短期入所や通所リハビリテーション(デイケア)、訪問リハビリテーションなどのサービスも提供しています。

介護療養型医療施設(介護療養病床)の退去について

介護療養型医療施設(介護療養病床)の平均在院日数は約1年半。約4割の方が、最期まで介護療養型医療施設(介護療養病床)で過ごしています。

退去条件は施設によって異なります。また、問題行動がひどくなり、周囲に迷惑をかけてしまう場合には退去せざるを得ないこともあります。対応できる医療処置の範囲、認知症の方の受け入れ態勢、退去の条件については、契約時に必ず確認しておきましょう。

介護療養型医療施設(介護療養病床)の職員体制

介護老人保健施設の職員体制は、以下の通りです。

  • 医師:3人以上。入所者48人に対して1人以上
  • 看護職員:入所者6人に対して1人以上
  • 介護職員:入所者6人に対して1人以上
  • 理学療法士や作業療法士:適当数

その他、栄養士や介護支援専門員が配置されています。

介護療養型医療施設(介護療養病床)のメリットとデメリット

介護療養型施設のイラスト

介護療養型医療施設(介護療養病床)のメリットとデメリットを比較してみましょう。

介護療養型医療施設(介護療養病床)のメリット

  • 介護保険施設の中で、医療看護面での対応が最も手厚い
  • 初期費用がかからない
  • 介護保険施設なので比較的安く利用でき、所得によっては住居費や食費が減免される費用軽減措置を利用できる
  • ターミナルケアや看取りも対応可能

介護療養型医療施設(介護療養病床)のデメリット

  • 看護や医師の人員配置が手厚いため、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)と比べると割高
  • 生活の場ではなく療養の場であるため、レクリエーションなどがない
  • 洗濯は原則として家族が対応する
  • 積極的な治療は行っていない
  • 多くが多床室であり、利用者一人当たりの面積は6.4平方メートルと介護保険施設の中で最も狭い
  • 廃止が決定している

介護療養型医療施設(介護療養病床)の対象者

折り紙

介護療養型医療施設(介護療養病床)に入所できる対象者を確認しましょう。

介護療養型医療施設(介護療養病床)が利用できる方

要介護1以上の認定を受けた方で、長期療養が必要な方が利用できます。病状が安定している方が対象で、急性期の方は利用できません。

介護療養型医療施設(介護療養病床)のサービス内容

施設介護のイメージ

介護療養型医療施設(介護療養病床)のサービス内容を見ていきましょう。

介護療養型医療施設(介護療養病床)のサービス内容

介護療養型医療施設(介護療養病床)では、下記のようなサービスを提供しています。

日常生活上の支援

医師や看護師による管理の下で、排泄介助や移動の介助、口腔ケア、入浴や食事などの日常生活上の支援を行います。 利用者の状態に応じた食事が提供されます。経管栄養や糖尿病・腎臓病などの制限食にも対応が可能です。

療養上の管理、看護

医師や看護職員による健康管理や、症状や体調などに応じた療養上の世話、医療的ケアが受けられます。

リハビリやレクリエーション

療養病床には40平方メートル以上の機能訓練室が設置されており、日常生活動作の維持や向上のためのリハビリテーションが行われています。ただし、施設によってリハビリの充実度は異なります。 また、重度の方が多いので、レクリエーションを行っていない施設もあります。

ターミナルケア

痛みの緩和や終末期医療などを受けられます。 ※サービスの内容は、サービス提供事業者によって異なります

介護療養型医療施設(介護療養病床)で入所する部屋のタイプ

●多床室

介護療養型医療施設(介護療養病床)の多くが、1部屋4床以下の相部屋です。ベッドの間には棚などで仕切りが作られており、プライベートが確保できるように工夫されています。

●従来型個室

トイレや浴室は共用で、居室が個室になっているタイプです。洗面台やトイレ、ミニキッチンが個室内にあるところもあり、個室内の設備は施設によって異なります。

●ユニット型個室

居室が個室になっているタイプです。10人ほどを1つのユニットとして、共同で食堂や生活室、トイレ、浴室を利用します。

●ユニット型個室的多床室

以前は「ユニット型準個室」と呼ばれていた部屋タイプです。天井と壁との間に隙間があるため、隣室から音や臭気、照明の明かりが漏れるため、完全な個室とは呼べません。10人ほどを1つのユニットとして、共同で食堂や生活室、トイレ、浴室を利用するのはユニット型個室と同様です。

廃止が予定されている介護療養型医療施設(介護療養病床)

考える介護士

介護療養型医療施設(介護療養病床)廃止の理由

介護保険が適用される介護療養型医療施設(介護療養病床)は、2006(平成18)年の医療保険制度改革/診療報酬・介護報酬同時改定により廃止が決定されました。2012(平成24)年以降、介護療養病床の新設は認められておらず、受け皿となる新しい介護保険施設の設置が求められています。

介護療養型医療施設(介護療養病床)廃止後はどうなる?

2017(平成30)年度末に転換期限を迎えるはずだった介護療養型医療施設(介護療養病床)ですが、6年間延長されることとなりました。2011(平成23)年度に引き続き、2度目の延長です。

多くの介護療養型医療施設(介護療養病床)では、医療ニーズが高い高齢者の療養だけではなく、“生活”を意識した介護医療院や介護老人保健施設への転換を図っています。

介護医療院は、長期療養のための医療的ケアが必要な方を受け入れ、ターミナルケアや看取りにも対応した施設です。一人当たりの面積は6.4平方メートルから8平方メートルへと広がり、多床室でもベッドの間を家具やパーテーションなどでしっかりと仕切ることで、プライバシーに配慮します。

介護療養型医療施設(介護療養病床)でかかる料金

介護とお金 

介護療養型医療施設(介護療養病床)は、病院や診療所、看護・介護体制、部屋のタイプによって異なります。 ここでは病院に設置された療養病床で、看護職は利用者6人に対して1人、介護職は利用者4人に対して1人の場合の費用を見ていきましょう。

介護療養型医療施設(介護療養病床)の1日ごとの基本料金

介護療養型医療施設(介護療養病床)費は、以下の金額となります。

従来型個室
看護(6:1)
介護(4:1)
要介護1 593円
要介護2 685円
要介護3 889円
要介護4 974円
要介護5 1,052円
多床室
看護(6:1)
介護(4:1)
要介護1 686円
要介護2 781円
要介護3 982円
要介護4 1,070円
要介護5 1,146円
ユニット型個室
ユニット型個室的多床室
要介護1 706円
要介護2 801円
要介護3 1,002円
要介護4 1,090円
要介護5 1,166円

※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。

※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。

その他にかかる費用

上記の金額の他に、部屋代と食事代がかかります。基準費用額は、1日当たり以下の通りです。

  • 食費:1,445円
  • 従来型個室:1,668円
  • 多床室:377円
  • ユニット型個室:2,006円
  • ユニット型個室的多床室:1,668円

また、利用者の所得に応じた軽減制度があります。詳しくは担当のケアマネジャーにご確認ください。

その他、おむつ代や洗濯代などの日常生活費、理美容代(実費相当額)がかかります。

ひと月毎にかかる費用

ひと月毎にかかる費用は、「介護保険の基本料金」+「部屋代」+「食事代」+「日常生活費」+「各種加算」などです。

要介護3の方が多床室を利用した場合」では、部屋代と食事代を基準費で計算すると、30日当たりで84,120円*となります。

部屋代、食事代は施設によって異なりますのであくまでも目安としてください。また、日常生活費や各種加算は入っていません。

*「介護報酬の算定構造」(令和3年4月改定版)を基に計算しています。

入所時にかかる費用

入所時にかかる保証金などはありません。

介護療養型医療施設(介護療養病床)に入所するまでの流れ

病棟のイメージ

最後に、介護療養型医療施設(介護療養病床)を利用する基本手順を確認しておきましょう。

介護療養型医療施設(介護療養病床)の利用方法と入所手続き

1.入所したい施設を探す

ケアマネジャーまたは治療を受けている病院の地域連携室に相談するか、インターネットなどを利用して自分で探すといいでしょう。サービス内容だけでなく、立地や周辺環境、利用料金などにも注意しましょう。

2.気になる施設に見学に行く

条件に合う施設を見つけたら、まずは見学に行き、実際の施設の雰囲気や食事の内容を見たり、実際に利用している方やスタッフとお話したりして、利用者にとって適した環境であるかどうかを確認することが大切です。事前にショートステイを利用してみてもいいでしょう。

3.申し込みをして契約

見学して気に入った施設を見つけたら、事業者と直接契約を結びます。契約時には、疑問に思うことは積極的に質問をしましょう。 ※上記は基本的な流れです。サービス提供事業者やケアマネジャー、利用者の状況によって異なります。

介護や医療的ケアを受けながら、長期療養をしたい方に

日常的な介護だけではなく、たん吸引や経管栄養、インスリン注射などの医療的ケアが必要になってくると、自宅で介護をしている家族にとっては大きな負担となります。医療ニーズが高くなっても、安心して過ごせる施設を探している場合には、介護療養型医療施設(介護療養病床)を検討してみてはいかがでしょうか。すでに廃止が決定していますが、転換先となる施設ができるまでの間や、医療的ケアに手厚い特別養護老人ホームへの待機している間などに利用してみるといいでしょう。ケアマネジャーや治療を受けている病院に相談してみてください。

監修者:鵜沢静香
監修者:鵜沢静香

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。