介護保険で購入できる福祉用具はどれ?特定福祉用具販売や購入時のポイントも解説

質問

質問者入浴やトイレなど、日常生活がままならなくなってきた父を在宅介護しています。介護する私の負担も大きくなってきたので、福祉用具に頼りたいです。福祉用具は購入できるものもあると聞きましたが、どのようなアイテムが買えるのでしょうか。


専門家入浴やトイレは特に介護の負担が大きいですよね。 特定福祉用具は介護保険で購入できますよ。特定福祉用具とは、利用者の肌が直接触れる介護用品のことです。 例えば、ポータブルトイレ、入浴用品、特殊尿器の交換可能部分などが「特定福祉用具販売」の対象となっています。

1割負担の方の場合、まず利用者が全額(10割)を支払い購入し、あとで市区町村の役所へ申請して払い戻し(9割)を受けます。市区町村により、申請方法やお支払い方法が異なる場合がございますので、ケアマネージャーに聞いていただくことをおすすめします。

介護保険で購入できる「特定福祉用具販売」の概要

特定福祉用具販売

特定福祉用具販売は、自宅での介護に必要なアイテム(福祉用具)を介護保険で購入することができる行政サービスです。まずは、サービスの基本概要をチェックしましょう。

衛生面が気になる福祉用具を購入できる

特定福祉用具販売の対象になっているのは、入浴や排泄の際、利用者の肌に直接触れるものです。

福祉用具は貸与(レンタル)できるものが多いですが、入浴や排泄に利用するアイテムは衛生面が懸念されるため、貸与には適していません。そのため、福祉用具の一部のアイテムは、利用者が買い取る形となっています。

購入できるアイテムは5品目です。故障や身体状況の変化など『やむを得ない事情』がない限り、原則として同一品目をくり返し購入することはできません。対象品目についてはのちほど詳しくご説明します。

要介護要支援の認定を受けた方が対象

特定福祉用具販売は、要介護または要支援の認定を受けた方が対象です。

福祉用具貸与の品目の中には、要介護認定を受けていても介護レベルによっては利用できないものもあります。ですが、福祉用具販売は比較的軽度な要支援1、2の方も対象となっています。

なお、特定福祉用具販売は居宅での利用が前提です。介護を要する方が、できる限り自宅で自立した生活を送るために必要な福祉用具を提供するサービスなので、基本的に自宅以外の使用は対象外です。

そのため、老人ホームなど『施設での使用を目的とした』利用はできませんので注意しましょう。

費用の7〜9割があとで返還される

福祉用具販売の費用は、いったん全額を支払ったあとに介護保険から払い戻される「償還払い」となっています。

福祉用具販売の利用者負担は、原則1割です(一定以上の所得がある場合は2割または3割負担)。そのため、支払った金額の7割〜9割が払い戻されるというわけです。

また、必要な届け出をすれば「受領委任払い」も可能です。受領委任払いは、まず自己負担額を販売事業者に支払い、残りの介護保険の給付分については市区町村が事業者に支払うという制度です。最初に全額支払う必要がなくなるので、費用負担が軽減できます。

利用限度額は年間10万円まで

特定福祉用具販売が適用されるのは年間10万円までです。毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間の購入金額が10万円未満なら介護保険が適用されますが、10万円を超えると全額自己負担となります。

気をつけたいのは、上限10万円は購入金額という点。例えば、1割負担の方が10万円分の福祉用具を購入して申請した場合、給付されるのは自己負担額1万円を除いた9万円です。つまり、給付金額の上限は9万円ということになります。

なお、購入金額が上限額に達しなかった場合、余った残高を翌年度に繰り越すことはできません。

申請方法は市区町村によって異なる

特定福祉用具販売の申請は市区町村の窓口にて行ないます。申請には、主に以下のようなものが必要です。

  • 福祉用具購入費用支給申請書
  • 委任状(本人や家族以外の方が申請する場合)
  • 領収書
  • パンフレット等の写し(購入製品の名称・定価・型番などが記載)
  • 受領委任払い申出書(必要な場合)

ただし、手続き方法や書類の様式は市区町村によって異なります。上記のほか、購入した事業者の証明書が必要な場合もあります。詳細はお住いの市区町村のホームページ等で確認してください。

>>福祉用具貸与(レンタル)とは 特徴と活用方法

特定福祉用具販売で購入できるのは5品目

介護施設の浴室

では、実際にどのような福祉用具が購入できるのでしょうか。対象の5品目をチェックしましょう。

腰掛け便座

腰掛け便座

腰掛け便座は、排泄の際に腰掛けるためのイスのようなものです。以下に該当するタイプが購入対象となっています。

  • 和式便座に設置して、腰掛け式に変換するもの
  • 洋式便座の上に設置して、高さを補うもの
  • 持ち運びができるポータブルトイレ

なお、ポータブルトイレは室内で利用できるものに限ります。

>>ポータブルトイレ(持ち運びトイレ)とは 利用方法と選び方

自動排泄処理装置の交換可能部分

自動排泄処理装置の交換可能部分

自動排泄処理装置は、寝たきりの方や自力での排泄が困難な方をサポートするアイテム。本体のほか、レシーバーやチューブ、タンクなどの交換可能なパーツで構成されています。

そのうち、尿や便の経路となり、介護をする方が簡単に交換できる部品が対象となります。

専用パッドや洗浄液など、消耗品にあたるものは対象外です。なお、自動排泄処理装置の本体は福祉用具貸与でレンタルできます。

>>自動排泄処理装置とは 利用方法と選び方

入浴補助用具

入浴補助用具

安全な入浴をサポートする以下のような入浴補助用具も対象です。

  • 入浴用イス
  • 浴槽用手すり
  • 浴槽内イス
  • 入浴台
  • 浴室内、浴槽内すのこ
  • 入浴用介助ベルト

入浴台は、浴槽のフチに設置して浴槽への出入りをしやすくするアイテムです。なお、滑り止めのためによく用いられるバスマット類は給付対象ではありません。

>>入浴を補助する「バスボード」の利用方法と選び方

簡易浴槽

簡易浴槽

「簡易浴槽」は、通常の浴室での入浴が困難な方に用いるポータブルタイプの浴槽のこと。寝室やリビングに持ち込んで、被介護者の体を洗ってあげたり、湯船で体を温めたりすることができるので便利です。

福祉用具販売の対象となっているのは、空気式や折りたたみ式など、容易に移動させることができるタイプです。取水や排水のために工事を伴うものは給付対象外です。

>>簡易浴槽とは

移動用リフトの吊り具部分

移動用リフトの吊り具部分

移動用リフトは、ベッドから車イスへ移乗するときなどに、被介護者の方の体を持ち上げて移動させることができます。移動用リフトの本体は福祉用具貸与でレンタル可能ですが、体に取り付ける吊り具の部分は特定福祉用具販売の対象となっています。

>>?ベッドから移動に便利な「移動用リフト」 利用方法と選び方

あらかじめ知っておきたい特定福祉用具販売の注意点

特定福祉用具販売の注意点

特定福祉用具販売の概要や対象品目を確認したところで、利用前に知っておきたい注意点もチェックしておきましょう。

指定事業者以外は介護保険が適用されない

特定福祉用具販売の適用が認められるのは、都道府県によって指定を受けた事業者から購入した場合のみです。指定を受けた事業者は「特定福祉用具販売事業者」として、利用者に福祉用具の選定や使い方についてアドバイスすることができます。

指定事業者以外から購入したものは、給付の対象にならないので要注意です。購入の際は、あらかじめ指定事業者かどうか確認しましょう。

利用の際はケアマネージャーに相談しよう

特定福祉用具販売について、わからないことや困ったことがあれば、担当のケアマネージャーに随時相談してください。

介護保険が関わるサービスは、利用方法を間違えると不利益になる可能性があります。また、自己判断で購入した福祉用具が、利用者の身体状況にそぐわない場合も。

不適切なものを選ぶと使い勝手が悪いだけではなく、安全性に問題が生じるおそれもありますから、専門家からアドバイスをもらいながら適切なアイテムを選びましょう。

特定福祉用具販売でトイレ・入浴介助の負担を軽減

在宅介護に役立つ福祉用具は多岐にわたります。多くの品目は福祉用具貸与でレンタル可能ですが、入浴や排泄に関わり、衛生面が気になる5つのアイテムは特定福祉用具販売の対象となっています。

このサービスを利用すれば、負担の大きいトイレや入浴の介助がスムーズになり、介護者の心身の負担も軽減できるでしょう。

アイテムによっては特定福祉用具貸与と併用する必要があるので、ケアマネージャーに相談して要介護度や身体状況に応じたものを取り入れてください。

監修者:山岸駿介
監修者:山岸駿介

理学療法士。臨床経験は7年。
急性期から慢性期、スポーツ分野など幅広い分野を経験。医療・介護・スポーツなど幅広い分野のリハビリに携わり、老若男女に正しい運動で、健康的な生活を送るサポートしている。

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