在宅介護に心強い「福祉用具貸与」とは?サービスの基本概要と利用方法

ご家族を在宅介護することになったら、少しでも生活しやすい環境を整えてあげたいですよね。そんなときに心強いのが「福祉用具貸与」というサービスです。今回は、福祉用具貸与の概要をはじめ、対象品目や利用方法について解説します。利便性の高い福祉サービスなので、ぜひ確認しておきましょう。

目次

  1. 福祉用具貸与とは?まずは基本概要をチェックしよう
  2. 福祉用具貸与の対象品目と対象者の範囲
  3. 福祉用具貸与サービスの利用方法
  4. 在宅介護に欠かせない福祉用具貸与

福祉用具貸与とは?まずは基本概要をチェックしよう

福祉用具のイメージ

さっそく、福祉用具貸与のサービス概要を確認していきましょう。

利用者に必要な福祉用具をレンタルするサービス

福祉用具貸与は、日常生活において何らかの介助が必要な方に対し、さまざまなサポート用具(福祉用具)をレンタルする制度です。この制度を利用すれば、被介護者が「起き上がる」「歩く」などの日常動作がしやすくなり、介護する方の負担も軽減できます。

福祉用具貸与の規定は厚生労働省が定めていて、13品目が対象です。要介護要支援の認定を受けていれば介護保険が適用され、所得に応じて1~3割の自己負担でレンタルすることができます。

福祉用具貸与を利用できる対象者は?

心身の機能低下により日常生活に支障があり、要介護要支援の認定を受けた方であれば、福祉用具貸与を利用することができます。ただし、利用できる福祉用具は要介護の度合いによって異なるため注意しましょう。症状が比較的軽度な要支援1、要支援2の方は、要介護の方と比べて利用できる福祉用具が限られています。

国の基準を満たした指定事業者が貸与をおこなう

福祉用具貸与のサービスを提供できるのは、国の基準を満たした指定事業者のみです。指定事業者になるための基準は、以下の3項目に分かれています。

 

  • 人員基準:配置すべき職員の人数や、必要な資格などについて
  • 設備基準:福祉用具の取り扱いに適した事務室・設備や、プライバシーに配慮した相談室を備えているか
  • 運営基準:衛生管理や勤務体制など、適切かつスムーズな運営体制が整っているか

 

上記のような基準をクリアすると、都道府県または市区町村から「福祉用具貸与事業者」として指定されます。専門知識のある「福祉用具専門相談員」が配置されていますので、安心してサービスを受けられるでしょう。

福祉用具貸与の対象品目と対象者の範囲

車いすや歩行器を使う女性

では、実際にどのような福祉用具をレンタルできるのでしょうか。13種類の対象品目と対象者を具体的に見ていきましょう。

車いす

車椅子

自走用標準型車いす、普通型電動車いす、介護用標準型車いすがレンタルできます。

対象者:要介護2~5

車いす付属品

車椅子付属品

クッションや電動補助装置、ブレーキなど車いすと一体的に使うものです。

対象者:要介護2~5

特殊寝台

特殊寝台

特殊機能が付いた介護用ベッド。転落や寝具のずれ落ちを防ぐサイドレールが取り付けられているか、後から設置可能なタイプが対象です。加えて、背部または脚部の傾斜角度を調節できる、または床の高さを無段階に調節できる機能が付いている必要があります。

対象者:要介護2~5

特殊寝台付属品

 特殊寝台付属品

特殊寝台に取り付けるサイドレールや手すり、テーブルなどです。特殊寝台と一体的に使うもののみが対象です。

対象者:要介護2~5

床ずれ防止用具

体位変換機

身体を支える面を変化させ、床ずれを防ぐアイテムです。送風装置または空気圧調整装置を装備した空気マット、もしくは体圧分散作用がある全身用のウォーターマットが対象です。

対象者:要介護2~5

体位変換器

体位変換機

 

寝ている人の身体の下に挿入し、体位を変える空気パッドなどです。動力で周期的に傾けられるものや、人による介助をサポートするものがあります。体位保持のみを目的としたタイプは除きます。

対象者:要介護2~5

移動用リフト

 移動用リフト

被介護者の身体を吊り上げる、もしくは体重を支える構造の移動サポート器具です。床走行式・固定式・据置式の3種類が対象で、取り付けに住宅改修を伴うものは含まれません。

対象者:要介護2~5

手すり

 手すり

 

 

歩行や立ち上がり動作などをサポートします。廊下や段差、トイレなどさまざまな場所に設置できるタイプがあります。ただし、設置工事を伴わないものに限ります。

対象者:要支援1、2および要介護1~5

スロープ

 スロープ

段差を解消する板状の用具です。段差は屋内外のあらゆる場所にあるため、スロープのサイズや材質も多岐にわたります。設置工事を伴うものは対象外です。

対象者:要支援1、2および要介護1~5

歩行器

 歩行器

歩行が困難な方の移動をサポートします。移動時に体重をしっかり支えられる構造になっていて、四脚タイプまたは車輪付きタイプがあります。四脚タイプは上半身で保持しながら移動できるもの、車輪付きタイプは身体の前と左右にハンドルが付いているものが対象です。

対象者:要支援1、2および要介護1~5

歩行補助杖

 歩行補助杖

歩行をサポートするための杖です。福祉用具としては松葉杖、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホーム・クラッチ、多点杖が対象です。

対象者:要支援1、2および要介護1~5

徘徊感知機器

 徘徊感知器

認知症の高齢者が屋外に出ようとした際、センサーで感知して家族や隣人に知らせる機器です。赤外線センサーで人の動きを感知するものや、床面に設置して重量センサーで感知するマット状のものなどがあります。

対象者:要介護2~5

自動排泄処理装置

自動排泄処理装置

寝たままの状態で尿や便を処理する装置です。排尿・排便を感知して自動的に吸引し、洗浄から乾燥までおこないます。

対象者:排尿・排便機能があるタイプは要介護4、5     

    排尿機能のみのタイプは要支援1、2および要介護1~5

 

利用者負担は貸与費用の1~3割

福祉用具貸与の費用のうち、利用者負担は原則1割です。 例えば、標準的な自走用車いすのレンタル代金は1ヶ月あたり500円程度ですが、購入すると10万円以上必要な場合もあるので、利用期間によってはレンタルしたほうが経済的でしょう。ただし、一定以上の所得がある場合は、2割または3割負担となります。

1ヶ月あたりの支給限度額は要介護のレベルごとに決められているため、その範囲内でやりくりするようにしましょう。

また、福祉用具貸与の価格は貸与事業者によって異なりますが、2018年10月から貸与価格に上限が設定されると共に、全国平均貸与価格が公表されるようになりました。これにより、利用する貸与事業者の貸与価格が適正かどうかあらかじめチェックできます。

福祉用具貸与サービスの利用方法

介護計画を立てるケアマネージャー

さいごに、福祉用具貸与サービスを利用する基本手順を確認しておきましょう。

レンタルまでの基本的な流れ

要支援要介護の認定を受けている場合、利用手順は以下のようになります。

 

  1. ケアマネジャーか地域包括支援センターに相談する
  2. ケアマネジャーがプランを作成し、福祉用具貸与事業者を選ぶ
  3. 福祉用具専門相談員が被介護者に適した福祉用具を提案
  4. 希望する福祉用具が問題なく使用できるかチェック
  5. 決定したら、契約内容やレンタル料金を確認し契約を交わす
  6. 指定日時よりレンタル開始(1ヶ月単位)

 

先述のとおり、福祉用具は、都道府県または市区町村に指定された福祉用具貸与事業者からレンタルします。福祉用具は品目ごとにさまざまな商品がありますが、専門知識のある相談員が被介護者の身体状況や利用環境に合うものを選定・提案しくれるので安心です。

また、レンタルしている福祉用具は定期的にメンテナンスがおこなわれ、必要に応じて用具を変更することもあります。

困ったときはケアマネや業者に相談しよう

福祉用具貸与サービスを利用するにあたり、困ったことがあればケアマネジャーや福祉用具貸与事業者の相談員などに相談しましょう。福祉用具は毎日使うものなので、選び方や使い方を誤ると事故の元になってしまいます。自己判断は避け、必ず専門家の意見を仰ぐようにしてください。

在宅介護に欠かせない福祉用具貸与

福祉用具貸与サービスを利用すれば、被介護者の生活の質が向上するとともに、介護する方の心身・経済面の負担を軽減することもできます。あまり知識がなくても、ケアマネジャーや専門相談員に相談すれば、適切なアドバイスをしてもらえるので初めての方でも安心です。

これから始まる在宅介護に備えて、福祉用具貸与サービスを利用することも検討してみてはいかがでしょうか。

(文・吉村綾子)

【無料相談】姉妹サイト
安心介護では、介護用品お探しサービスも実施しております。介護商品のレンタルやご購入を検討中の方、介護用品お探しをお手伝いいたします。
福祉用具お探しサービス
福祉用具の使い方を知りたい方はこちらから【介護のいろは】
福祉用具お探しサービス
監修者:山岸駿介
監修者:山岸駿介

理学療法士。臨床経験は7年。
急性期から慢性期、スポーツ分野など幅広い分野を経験。医療・介護・スポーツなど幅広い分野のリハビリに携わり、老若男女に正しい運動で、健康的な生活を送るサポートしている。
>>ホームページ
>>YouTube