短期入所療養介護(医療型ショートステイ)とは? 利用対象者や料金などを詳しく解説

医療型ショートステイの光景

医療的な管理や処置が必要な方でも利用できる、短期入所療養介護(医療型ショートステイ)。本記事ではそのサービス内容や利用方法、費用などについて解説しています。医療的ケアが必要な方でも安心して利用できるサービスを探している方は、ぜひ確認しておきましょう。

 

目次

  1. 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)とは?知っておきたい基本ポイント
  2. 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を利用できる対象者
  3. 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)のサービス内容
  4. 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)でかかる料金
  5. 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の利用方法と選び方
  6. 介護保険サービスを利用して上手にレスパイトを取りましょう

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)とは?知っておきたい基本ポイント

折り紙のイメージ

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の基本ポイントを確認していきます。

介護施設に短期間入所するサービス

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)とは、自宅で療養生活を送っている高齢者が、介護老人保健施設(老健)などの施設に短期間入所する介護保険サービスです。

医師や看護師の人員配置が手厚い施設を利用するので、医療的ケアを必要とする方でも安心して入所できます。入所中は医師や看護師などの管理の下で、介護や医療的ケア、在宅での療養生活を続けるための機能訓練を受けて過ごします。

ショートステイが必要なのは、冠婚葬祭や出張、病気などの理由で介護者が一時的に介護をできなくなったときだけではありません。介護者が介護から一定期間離れ、レスパイト(身体的精神的負担の軽減、息抜き)をするためにも必要です。無理なく介護を続けるためにも、短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を上手に利用しましょう。

利用できる施設の種類

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を行っているのは、ほとんどが介護老人保健施設(老健)です。

その他にも、療養病床のある診療所または病院、老人性認知症疾患療養病棟のある病院、介護医療院がサービスを提供しています。また、一定の基準を満たした診療所も短期入所療養介護(医療型ショートステイ)のサービス提供が可能です。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を利用できる日数

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を利用できるのは、連続して30日間までです。介護保険には要介護度ごとに支給限度額があるので、その金額内に収まるように利用します。もし、支給限度額内に収まらなかった場合には、超えた分が全額自己負担となります。また、31日以降の利用には、介護保険は適用されません。

さらに、介護認定期間の半数までという規定もあります。介護認定期間は、新しく要介護認定を受けた方で原則6ヵ月、更新の方で原則12ヵ月です。その半数を超えて利用する場合には、あらかじめ市区町村に届け出が必要ですので、ケアマネジャーに相談をしましょう。

短期入所生活介護(ショートステイ)との違い

施設に短期間入所する介護保険サービスに、短期入所生活介護(ショートステイ)があります。短期入所療養介護(医療型ショートステイ)との一番の違いは、入所する施設です。

●短期入所生活介護(ショートステイ)

特別養護老人ホームやショートステイ専門施設に入所

●短期入所療養介護(医療型ショートステイ)

介護老人保健施設(老健)や病院、診療所などに入所

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の方がより医師や看護師の人員配置が手厚いこと、医療的ケアが必要な方でも安心して入所できることが特徴です。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を利用できる対象者

OKサインのシニア女性

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を受けられる対象者を確認しましょう。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を利用できる方

介護保険サービスの短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を利用できるのは、要介護1~5の認定を受けており、病状が安定期の方です。 要支援1、2の方は、介護予防短期入所療養介護(医療型ショートステイ)が利用できます。

対応可能な症状

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)で対応可能な症状や状態の例には以下のようなものがあります。

  • 在宅酸素
  • 胃ろうなどの経管栄養
  • 褥瘡
  • 痰吸引
  • 人工肛門
  • インスリン接種
  • 認知症 
  • 尿カテーテル
  • 末期がん など

どのような症状にどこまで対応可能なのかは、施設によって異なります。特に医療依存度の高い方は、緊急時の対応方法などとあわせて事前に確認をしておきましょう。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)のサービス内容

医療型ショートステイのイラスト

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)のサービス内容を見ていきましょう。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)で受けられるサービス

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)で受けられるサービスには以下のようなものがあります。

日常生活上の支援

医師や看護師による管理の下で、排泄介助や移動の介助、入浴や食事などの日常生活上の支援を行います。 食事は、施設に在籍している栄養士が栄養バランスを考えて、利用者の状態に応じた食事が提供されます。経管栄養、糖尿病・腎臓病などの制限食にも対応が可能です。

機能訓練

入所中には、利用者の心身の状態に合わせ、理学療法士や作業療法士などから日常生活に根差した機能訓練が受けられます。

健康管理や療養上の世話

体温、脈拍、血圧、呼吸などのチェックによる健康管理や、症状や体調などに応じた療養上の世話や医療的ケアが受けられます。

レクリエーション

内容は施設によって異なります。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の1日(例)

医療型ショートステイの1日

※上記は一例です。サービス提供事業者、利用時間、サービス内容にもよって異なります。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)で入居する部屋のタイプ

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)には、4つの部屋タイプがあります。

●従来型個室

トイレや浴室は共用で、居室が個室になっているタイプです。洗面台やトイレ、ミニキッチンが個室内にあるところもあり、個室内の設備は施設によって異なります。

●多床室

1部屋4床以下の相部屋です。ベッドの間には棚などで仕切りが作られており、プライベートが確保できるように工夫されています。

●ユニット型個室

居室が個室になっているタイプです。10人ほどを1つのユニットとして、共同で食堂や生活室、トイレ、浴室を利用します。

●ユニット型個室的多床室

以前は「ユニット型準個室」と呼ばれていた部屋タイプです。天井と壁との間に隙間があるため、隣室から音や臭気、照明の明かりが漏れるため、完全な個室とは呼べません。10人ほどを1つのユニットとして、共同で食堂や生活室、トイレ、浴室を利用するのはユニット型個室と同様です。

入所前日に用意しておくもの

入所前日には、以下のものを用意しておきましょう。

  • 薬(1回分ずつにまとめておく)
  • 洗面用具や身だしなみ用品
  • 着替え
  • 上履き
  • おむつの替え
  • パジャマ、寝間着
  • タオル

有料でパジャマやタオルレンタルを用意している施設やオムツの持ち込みが不要の施設もあるので、事前に確認をしておきましょう。

老々介護の方などは、訪問介護の際に訪問介護員(ホームヘルパー)に準備してもらうことも可能です。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)でかかる料金

介護とお金

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の料金は、施設の種類や部屋タイプ、看護体制によって異なります。 今回は最も利用の多い、介護老人保健施設(老健)での短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の金額を紹介します。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の1日ごとの基本料金

介護老人保健施設(老健)での短期入所療養介護(医療型ショートステイ)は、基本型や在宅復帰型療養型などの介護老人保健施設(老健)の種類、看護体制によって異なります。 ここでは、介護老人保健施設(老健)の【基本型】の料金を見てみましょう。

介護老人保健施設
短期入所療養介護費
従来型個室 要介護1 752円
要介護2 799円
要介護3 861円
要介護4 914円
要介護5 966円
多床室 要介護1 827円
要介護2 876円
要介護3 939円
要介護4 991円
要介護5 1,045円
ユニット型介護老人保健施設
短期入所療養介護費
ユニット型個室
ユニット型個室的多床室
要介護1 833円
要介護2 879円
要介護3 943円
要介護4 997円
要介護5 1,049円

※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。

※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。

介護予防短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の1日ごとの基本料金

介護老人保健施設(老健)の【基本型】を利用した際の介護予防短期入所療養介護(医療型ショートステイ)費は、以下の金額となります。

介護老人保健施設介護予防短期入所
療養介護費
従来型個室 要支援1 577円
要支援2 721円
多床室 要支援1 610円
要支援2 768円
ユニット型介護老人保健施設介護予防短期入所
療養介護費
ユニット型個室
ユニット型個室的多床室
要支援1 621円
要支援2 782円

※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。

※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。

その他の料金

上記の金額の他に、部屋代と食事代がかかります。利用する施設によって金額が違うので、あらかじめ確認しておくといいでしょう。

国が定めた基準費用額は、1日当たり以下の通りです。

  • 食費:1,392円
  • 従来型個室:1,668円
  • 多床室:377円
  • ユニット型個室:2,006円
  • ユニット型個室的多床室:1,668円

また、利用者の所得に応じた軽減制度があります。詳しくは担当のケアマネジャーにご確認ください。

その他、おむつ代やレクリエーションで使用した材料費などの日常生活費(実費相当額)がかかります。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の利用方法と選び方

ショートステイのお迎え

最後に、短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を利用する基本手順を確認しておきましょう。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の選び方

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)は施設の場所が離れていたり、日程によって利用できる施設が限られたりするため、なかなか事前に見学をするのは難しいかもしれません。ただし、希望すれば見学をすることも可能です。

部屋の様子や職員や施設の雰囲気を確認したうえで利用できれば、家族も安心して任せることができます。

実際に見学に行けなくても、入浴施設や送迎について、機能訓練やレクリエーションの内容などを事前に確認しておくといいでしょう。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の利用方法

利用手順は以下のようになります。

  1. 担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに相談する
  2. ケアマネジャーがサービス提供事業者(施設)を探し、利用日の調整や「診療情報提供書」、「ADL表」などのやり取りをする
  3. 施設と利用日が決まったら、ケアマネジャーがケアプランを作成
  4. サービス提供事業者(施設)と面談し、利用者の状況を確認したうえで契約を交わす
  5. 指定日時よりサービス開始

※上記は基本的な流れです。サービス提供事業者やケアマネジャー、利用者の状況によって異なります。

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の予約方法

短期入所療養介護(医療型ショートステイ)は人気があり、予約が取りにくいサービスです。多くの施設では2ヵ月前から予約ができますので、それまでに利用日を決めておきましょう。ゴールデンウィークや年末年始などは、特に予約が取りにくい傾向があります。 とはいえ、家族の急病時など、急な利用ができないというわけではありません。緊急時のためにベッドを空けている施設や、キャンセルの出た施設などもありますので、まずはケアマネジャーに相談しましょう。

介護保険サービスを利用して上手にレスパイトを

医療ニーズが高い方や認知症の方を介護している方には、たとえ本人に自覚がなくても精神的・身体的な負担がかかっています。短期入所療養介護(医療型ショートステイ)は、介護から離れる時間を作ってレスパイトの時間を作る介護保険サービスです。介護している家族の出張や病気、冠婚葬祭などのケースだけではなく、短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を利用して上手に充電時間を作りましょう。

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監修者:鵜沢静香
監修者:鵜沢静香

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。