看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)とは?

退院直後や看取り期、認知症などで医療ニーズが高くなっても、自宅での生活を継続したい本人と、継続させたい家族の希望を、4つのサービスで支えるのが看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)です。本記事では、そのサービス内容や費用、利用方法を解説します。

目次

  1. 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)とは?知っておきたい基本ポイント
  2. 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)の対象者
  3. 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)のサービス内容
  4. 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)でかかる料金
  5. 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)の利用方法
  6. 医療ニーズの高い方の“もうひとつの家”に

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)とは?知っておきたい基本ポイント

介護について相談する親子

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)の基本ポイントを確認していきましょう。

医療ニーズの高い人に4つのサービスを一体的に提供

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)は、「通い(デイサービス)」を中心に、必要な時に「宿泊」できるショートステイと自宅で受ける「訪問介護」、「訪問看護」を組み合わせて、自宅での生活をサポートする介護保険サービスです。「看たき」とも呼ばれています。2015(平成27)年までは「複合型サービス」と呼ばれていました。

「訪問看護」の時だけではなく、「通い」や「宿泊」を利用している際にも看護師から医師の指示に基づいた医療処置を受けられることが大きな特徴です。

退院直後の方やがん末期で自宅での生活を希望している方、酸素吸入を利用しているなど医療ニーズの高い方、認知症の方、病状が不安定な方などでも、住み慣れた自宅や地域での暮らしを続けられるように利用者本人と家族の両方を支えます。医療ニーズの低い方から、看取り期の方まで利用できるサービスです。

医療行為の中には、喀痰吸引やインスリン注射など本人と家族なら自宅でも行うことができるものがあります。ただし、最初は誰でも不慣れなものです。そこで、看護師が訪問した際にやり方を教えてもらい、徐々に本人や家族が慣れていく…という使い方もできます。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)は、サービス内容や頻度に関わらず一定の金額でサービスを受けることができます。要介護度ごとに定められている支給限度額を気にせずに、利用者の状況に応じたサービスを組み合わせることができるのがメリットのひとつです。

例えば、家族が仕事をしている平日には、朝ご飯を自宅で食べて家族の出勤前にデイサービスに行き、夕飯を食べ、必要に応じてそのまま宿泊…など、利用者の介護レベルや家族の都合によって自由にサービスを組み合わせることができるので、介護する家族は無理のない生活を送ることができます。

「通い」「宿泊」「訪問介護」「訪問看護」の4つのサービスを同じ事業所が提供するので、サービスごとに複数の事業所と契約する必要がありません。また、「通い」や「訪問」で日常的に利用者の心身状態を把握した職員のいる場所で宿泊できるので、アットホームな雰囲気の中、知らない人が苦手な方でも安心です。

1日当たりの利用定員

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)の事業所では、利用者の登録数について29人以下と定められています。1日当たりの利用定員も定められており、「通い」の利用者は概ね15人以下(26名以上29名以下でデイサービスの施設が一定の基準を満たしている場合には、1日当たりの利用定員を18人以下)、「泊まり」は概ね9人以下と少人数なのが特徴です。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)の対象者

シニア女性

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)を受けられる対象者を確認しましょう。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)が受けられる方

要介護1以上の認定を受けた方が利用できます。

また、介護が必要になっても住み慣れた地域で生活できるように支援する事を目的とした「地域密着型サービス」のため、看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)の事業所と同じ市区町村に住んでいる必要があります。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)が受けられない方

自立や要支援1、2の方、看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)の事業所と同じ市区町村に住んでいない方は利用できません。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)のサービス内容

介護スタッフの男性

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)のサービス内容を見ていきましょう。

デイサービス

少人数のアットホームな雰囲気の中、排泄や入浴、食事などの生活上の支援や主治医の指示に基づいた医療処置、リハビリなどが受けられます。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)のデイサービスでは、家族が出勤する前の朝早い時間帯から帰宅する時間帯まで利用ができ、利用時間に融通が利くのが特徴です。

訪問看護サービス

デイサービスと同じ事業所の看護職員が自宅を訪れ、医療ニーズの軽い方や看取り期の方など、利用者の医療ニーズに合わせた医療処置や服薬管理、バイタルチェックを行います。退院後の在宅生活に不安がある方などには本人や家族への指導を行います。

訪問介護サービス

デイサービスと同じ事業所の介護職員が、利用者の心身の状態や家族の都合に合わせて訪問する、24時間対応のサービスです。「1回30分以下」というような時間の制限や回数制限はありません。

  • 起床や就寝時のお手伝い(着替え、水分補給、移乗など)
  • オムツ交換やトイレ誘導などの排泄介助
  • 安否確認
  • 服薬介助
  • 配膳や下膳
  • 体位変換
  • 掃除や調理といった生活支援
  • 買い物同行 など

宿泊サービス

利用者や家族のニーズに合わせて利用できるサービスです。顔なじみの介護職員や利用者のいる通いなれた施設を利用するので、安心して宿泊できます。突然の泊りにも対応しており、必要な時にいつもの施設が利用できるサービスです。

日中にデイサービスで体調の変化があった場合には、帰宅を中止して宿泊するなど、柔軟な利用もできます。利用者の病状が急変した場合には、主治医や協力医療機関と連絡を取って対応をしたり、看護師が応急手当などを行います。ただし、深夜や夜間帯については、看護師の人員基準は定められてないので看護師がいないこともあります。

介護保険サービスには、同様のサービスに短期入所生活介護(ショートステイ)があります。こちらは原則として事前に予約が必要となり、状況によっては日程の調整が必要となります。

併用できるサービス

別の事業所を利用して、福祉用具貸与、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導などの介護保険サービスと併用することが可能です。

他の事業所の訪問介護や訪問看護、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)を利用することはできません。

小規模多機能型居宅介護との違い

小規模多機能型居宅介護との違い

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)は、小規模多機能型居宅介護のサービスに訪問看護が加わった介護保険サービスです。小規模多機能型居宅介護よりも日中の看護職員の人員配置が手厚く、同一事業所から訪問看護を受けることができます。

小規模多機能型居宅介護サービスでは、別の事業所から訪問看護サービスを受けることが可能です。看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)では、介護職員と看護職員が同じ事業所に在籍していること、看護職員が「通い」や「宿泊」のサービスを通して普段から利用者と深く関わっていることが特徴です。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)でかかる料金

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)を利用すると、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか。その金額を見ていきましょう。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)の1月ごとの基本料金

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)費は、以下の金額となります。

要介護1 12,438円
要介護2 17,403円
要介護3 24,464円
要介護4 27,747円
要介護5 31,386円

※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。

※サービス提供事業所と同一建物に居住している場合は、金額が異なります。

※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。

その他にかかる料金

上記の金額の他に、利用者の必要に応じて「口腔機能向上加算」「栄養改善加算」などがかかります。

また、施設で利用した昼食費やおやつ代、宿泊時の部屋代がかかります。金額はサービス提供事業者によって異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。 また、おむつ代やレクリエーションで利用した材料費などの日常生活費(実費相当額)がかかります。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)の利用方法

看護小規模多機能型居宅介護の相談

最後に、看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)を利用する基本手順を確認しておきましょう。

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)の利用方法

要介護1~5の認定を受けている場合、利用手順は以下のようになります。

  1. 担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに相談する
  2. ケアマネジャーの助けも借りて、複数のサービス提供事業者をピックアップして見学や体験利用をする
  3. 利用したい事業者が決まったら面談をして、困りごとなどの共有をする
  4. サービス提供事業者(施設)への登録・契約を交わす
  5. 指定日時よりサービス開始

※上記は基本的な流れです。サービス提供事業者やケアマネジャー、利用者の状況によって異なります。

医療ニーズの高い方の“もうひとつの家”に

看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)は、同一の事業所から通い(デイサービス)を中心に、利用者や家族の状況、主治医の指示に合わせて、訪問介護や訪問看護、そして宿泊のサービスを受ける介護保険サービスです。サービス時間や回数などが柔軟に組み合わせられるので、利用者の状態の変化にも対応しやすく、介護者は仕事や育児と介護の両立を無理なく継続することができます。利用者にとっては、顔なじみのスタッフと利用者に囲まれて安心できる“もうひとつの家”となることでしょう。医療ニーズが高くても自宅での生活を続けさせたい方、介護と自分の生活の両立で悩んでいる方、温かい環境で療養生活をさせたい方は、一度ケアマネジャーに相談してみてはいかがでしょうか。

監修者:鵜沢静香
監修者:鵜沢静香

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。