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認知症で食事拒否の実母。原因と対策は?

 認知症が進行すると、目の前に食事を用意しても、食べないことがあります。認知症の人に限らず、高齢者は活動量が低下するため、食欲がわかないことも少なくありません。一食、食事をとらなかった程度では問題ありませんが、食事を食べないことが続くと、低栄養に陥る可能性があります。この記事では、特に認知症をお持ちの方が、食事をとろうとしない場合に考えられる原因と対策を解説します。

 

質問【質問】

 在宅介護をしている認知症の義母が食事を食べてくれません。 認知症になると食事を拒否すると聞いた事がありますが 体重が落ちてきているので、栄養不足で入院にならないか心配です。 食べてくれる方法はないでしょうか?

 

目次

  1. 認知症高齢者の食事拒否の原因と対策
    1. 箸やスプーンなど食具の使い方がわからない
    2. 目の前にあるものが食べ物だとわからない
    3. 食事に集中できない
    4. 食ベ物の位置関係が認識できない
    5. 姿勢が保てない
    6. 口に入れたものを出してしまう
    7. 食事中に寝てしまう
    8. 食欲がない
  2. まとめ

認知症高齢者の食事拒否の原因と対策

食事介護の悩み

 認知症の人が食事を拒否するのには、脳の認知機能低下や、それに伴って引き起こされる心理的な問題や行動の異常、身体機能の低下など、さまざまな原因があります。食事を拒否する原因が認知症によるものなのか、体調不良、長年の習慣、周囲の環境が影響しているのかを見極めることが大切です。

1)箸やスプーンなど食具の使い方がわからない

原因

 スプーンのさじの部分を持って眺めている、食器にふれてばかりいるなどの場合は、認知症の症状である「失行」により、どうやって食べたらよいのかがわからなくなっていることが考えられます。失行とは、脳の認知機能低下が原因で、長年の習慣によって身につけた日常の動作がよくわからなくなってしまう症状です。

対策

 利き手に箸やスプーンなどの食具を持ってもらい、もう片方の手に食器をもってもらいます。食べる構えがつくられたことで、食べ始める方が多くいます。混乱が解消されない場合は、二人羽織のように後方から食行動支援を行うことも1つの方法です。

 重度の認知症で、食具の利用が難しい場合には、おにぎりやサンドイッチなど、道具を使わずに食べられる食べ物を用意することもよいでしょう。

 

2)目の前にあるものが食べ物だとわからない

原因

 食事を目の前にしても食べ始めず、手でもてあそぶような場合は、食べ物だと認識できていない可能性があります。認知症の症状の1つである「失認」は、食べ物と食べられない物を認識することを難しくします。失認とは、視覚など感覚の異常がないのに、対象を認識できなくなってしまう症状です。

対策

 食べ物であることを認識できていないときには、「昼食の時間ですよ」などと声をかけたり、「おいしいプリンですよ」と一緒に食べたりすることで、目の前の食事が食べ物であることを認識して、食べ始めることができます。温めなおして香りを認識できるようにしたり、サンドイッチなどを手にもってもらうなど、五感を生かして食べ物だとわかってもらうこともよいでしょう。

 最も効果的なのは、味わってもらうことです。一口目に比較的味や香りが強いものを口に入れ、食べ物であることを認識してもらいます。

 嚥下障害があり、嚥下食を食べている人は、食べ物が液体にしか見えないことがあります。食品を全部混ぜてしまうのではなく、食材ごとに色味を生かしたり、ムースを食品のかたちに成形するなど、見た目を工夫することが重要です。

3)食事に集中できない

原因

 認知症の症状の1つに、集中力が続かないことがあります。周囲の環境の影響を受けやすく、少しの刺激で食事をする気持ちがなくなり、食事拒否につながります。騒々しいところ、バタバタした環境では、音などが刺激になり、食事に集中できないこともあります。

対策

 認知症の人が落ち着いて食事がとれるように、適度な静かさを保つようにしましょう。特に突然の物音や大声に、認知症の人は恐怖や不安を感じます。周囲で大きな声で話したり、大きな物音をたてないように気をつけましょう。特に、一人暮らしをしてきた人は静かな環境に慣れていて、騒がしい場所では落ち着かない傾向があります。

 また、尿意や便意を感じていると食事に集中できません。排泄ケアにも気を配りましょう。

 さらに、不安な気持ちが強いときも、食事に集中することが難しくなります。時間をおいたり、気分転換をしたりして、気持ちが落ち着いたころに食事をしてみるとよいでしょう。

4)食ベ物の位置関係が認識できない

原因

 目の前にある物がどこにあるのか、複数の物が並んでいるとき、その位置関係について、私たちは視覚を使い、高度な認知機能を働かせて把握します。認知症ではこうした処理を脳で行うのが難しくなってしまうため、物の位置や複数の物の位置関係がつかみにくくなることがあります。

対策

 判断力が低下しているため、目の前にたくさんの食器が置かれていると、混乱してしまいます。複数の小さめの食器に盛った食事を一皿ずつ出したり、大皿に主食と副食を盛り付けたりするなど、配膳を工夫しましょう。  

5)姿勢が保てない

原因

 腰痛で座っているのがつらい、皮膚疾患が座面に当たる、姿勢が保てずに前傾してしまうなど、つらい姿勢で食事をしていることを、認知症の方は自ら訴えることができません。しかしこうした苦痛から食事拒否につながることがあります。

対策

 クッションや椅子の高さを工夫するなどして、食事をしている間も楽に姿勢が保てるようにして、苦痛を取り除きましょう。

6)口に入れたものを出してしまう

原因

 口に入れたときに違和感のある食形態だったり、熱すぎたり、嫌いな食べ物だったりすると、吐き出してしまうことがあります。

 味覚障害を発症している可能性や、義歯が合っていなかったり、虫歯や歯周病、口内炎で痛みを感じていたりするなど、口の中の問題も考えられます。こうした場合、口の中に異物が入ることに敏感になります。食事を出しても、口を閉ざして開けてくれなかったり、スプーンを入れると噛んでしまったりすることもあるでしょう。

対策

 吐き出す物と吐き出さない物がある場合は、吐き出す物を食事に取り入れないようにしましょう。

 味覚障害がある場合には、薬の見直し、他の疾患への対処、亜鉛や鉄の補給など、治療によって治ることもありますので医師に相談しましょう。また、義歯が合わないと、唇をうまく閉じられないこともあります。口の中が痛いと、口腔ケアを行うことも難しくなるため、歯科を受診しましょう。口腔過敏の状態になると、ますます口の中に食べ物が入ることを嫌がります。根気よく口腔ケアを続け、口の中の状態を整えましょう。  

7)食事中に寝てしまう

原因

 睡眠・覚醒のリズムや、日中活動と休息のバランスが乱れていることが挙げられます。認知症が進行すると、ウトウトしがちになることが多くなります(傾眠)。

 不眠傾向があり睡眠薬を飲んでいる場合はその影響も考えてみましょう。

対策

 睡眠不足を解消し、十分に休息をとることが第一です。覚醒していない状態で食事をすると、誤嚥のリスクも高まります。食事中に頻繁にすぐ寝てしまうような人は、唾液でむせることが多いので注意しましょう。

 睡眠薬による影響が疑われる場合は、主治医に相談してください。

8)食欲がない

原因

 認知症の進行によって誰でも徐々に食欲は落ちていきます。しかし、比較的急に食欲が落ちた時は、全身状態の悪化、または何らかの疾患の可能性もあります。痛みはないか、便秘等の排泄の問題はないかなどを把握しましょう。

 心の状態を確認することも大切です。ストレスがあったり、うつ症状や不安な気持ち等があると、食欲はわきません。

 薬の影響も考えられます。例えば、副作用で胸焼けが起き、食欲が湧かない可能性もあります。

対策

 突然、食欲が落ちたときには、心筋梗塞や肺炎、脱水症や逆流性食道炎などの病気であることもあります。心身の不調のせいで食べられないのか、認知症の影響で食べられないのかは、見極めが難しいため、迷った際には安易に判断せず、主治医等に相談しましょう。 薬の処方に変更があったときは、食欲を含めた日頃の様子に変化がないか、注意して観察しましょう。

 また、認知症でなくても、高齢になると食べる意欲や興味がなくなってしまうことはあります。たとえ一時的に栄養が偏っても、本人の好きな物を優先して献立を考える、興味を引く彩りや盛り付けにする、楽しい気分で食事ができる環境をつくるなど、食べることが喜びとなるような工夫をしましょう。

まとめ

  • 認知症の高齢者が食事を拒否する理由として、認知症の影響によるもの、心身の健康状態によるもの、環境によるものなど、さまざまな原因がある。
  • 根気強く原因を見極め、対策を講じていくのがよい。
  • 家族は負担を抱えこまず、主治医や介護の専門家に相談し、サポートを受けながら、ともに食事の内容や環境を調整するとよい。

 認知症の人が食事を拒否する原因とその対策が参考になった方は、ぜひSNSなどでシェアしてください。

(編集:編集工房まる株式会社)

 


監修者 野溝明子

監修者:野溝朋子

医学博士。鍼灸師。介護支援専門員。

 東京大学理科一類より同理学部、同大学院修士課程修了(理学修士)、東京大学医学部(養老孟司教室)で解剖学を学んだ後、東京大学総合研究博物館(医学部門)客員研究員。医療系の大学で非常勤講師を務めるほか、鍼灸師として個人宅や施設などへ出向き施術を行っている。

 著書に『看護師・介護士が知っておきたい 高齢者の解剖生理学』『セラピストなら知っておきたい解剖生理学』『介護スタッフのための 安心! 痛み緩和ケア』など。