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嚥下食とは?

 加齢による口やのどなどの機能低下により、かみにくくなった、飲み込みが悪くなったときに役立つのが嚥下食です。介護者の方が手軽に作ることができる嚥下食のレシピや、レトルト、冷凍食品を紹介します。

目次

  1. 嚥下食とは?
  2. 嚥下食ピラミッドを知っていますか?
  3. 嚥下食の作り方の注意点
  4. 嚥下食を作るコツとレシピアイディア
  5. 手軽に使える嚥下食
  6. まとめ

 嚥下食とは?

高齢者の食事について

 高齢になると、食べ物を噛んで適当な大きさにまとめる咀嚼の力、ゴックンと飲み込む嚥下の力が衰え、摂食・嚥下障害を起こし、これまで食べていた食事が食べられなくなります。そういった場合に活用したいのが、嚥下食です。嚥下食は、かみやすく、飲み込みやすいように工夫されています。

嚥下食ピラミッドを知っていますか?

 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会では、嚥下食を咀嚼の力と嚥下機能のレベルによって分類し、嚥下食分類のピラミッド(図)をまとめています。

嚥下ピラミッド

  • 0j:嚥下訓練食品 ゼリー
  • 0t:嚥下訓練食品 とろみ水
  • 1j:嚥下調整食 ゼリー、プリン、ムース
  • 2:嚥下調整食 ミキサー食、ピューレ食、ペースト食、(2-1:なめらかで均質、2-2:粒を含む不均質)
  • 3:嚥下調整食 ソフト食、やわらか食
  • 4:嚥下調整食 全粥、軟粥

 0j、0tは、重度の摂食・嚥下障害を抱えた人の嚥下評価をしたり、訓練をするときに用いる形態です。jはゼリー、tはとろみを表しています。0jは、スプーンでスライス状にすくえる適度なかたさのゼリーで、そのまま丸のみすることもでき、万が一、口やのどに残ってしまった場合にも吸引できます。0tはとろみ水で、少量ずつ飲むことを想定してつくられた形態です。

 1j〜4は、日常的な食事に取り入れる嚥下調整食です。

 1jは、均質で、付着性、凝集性、かたさなどに配慮したゼリー、プリン、ムース状の食品です。口に入れる前に、のどに送り込むのに最適なかたまりになっているので、少量ずつすくってそのまま飲むことができます。おもゆゼリーやミキサー粥のゼリーのような形態です。

 2はピューレ、ミキサー食やペースト食などのことです。べたつかずまとまりやすいので、口の中で簡単にまとまり、のどに残らず誤嚥しにくい形態です。2-1は均質、なめらかで粒がないため、より口の中で簡単にまとまります。2-2には粒があり、少し不均質でざらつきがある形態です。

 3は、食べ物の形を残していますが、やわらかく調理してあるため、歯がなくても舌と口蓋(上あご)で押しつぶすことができ、ばらけにくいので飲み込みやすいかたまりにすることが簡単です。やわらか食、ソフト食と呼ばれるものは、この分類です。

 4は、食具(箸、スプーンなど)で簡単に切れる程度のやわらかさをもっています。お粥ややわらかいご飯のような形態です。3よりは形があるため、舌と口蓋だけでは押しつぶせず、歯がない人は歯茎をつかってすりつぶすことが必要です。

嚥下食の作り方の注意点

 嚥下食の基本は、口に入れてからまとめやすく、のどをとおるまでなめらかに動くものです。嚥下しにくいのは以下のようなものです。これらを避けたり、下のように調理方法を工夫します。

  1. サラサラした液体
  2. 口の中でまとめにくく、バラバラになるもの
  3. パサパサしているもの、乾燥しているもの
  4. 粘り気の強いもの
  5. 固いもの
  6. 噛み切りにくいもの
  7. 平たく、口の中やのどにくっつきやすいもの

 

a. かみやすくする工夫

  • 食材をやわらかくするため、よく加熱しましょう。やわらかい食材を選ぶのもポイント。肉は適度に脂身のあるものを、魚は加熱しても身がしまらないものを選びます。
  • たこ、いか、キャベツなどは、冷凍してから調理するとやわらかくなります。トマトやピーマンなどは皮が口に残りやすいので、皮を取るとよいでしょう。
  • 野菜は繊維を断ち切る方向に切りましょう。白菜などの野菜は、繊維を断ち切る方向にそぎ切りにすることで、かみ切りやすくなります。
  • こんにゃくなどは、あらかじめ適度な小ささにし、両面に隠し包丁を入れることでかみやすくなります。
  • かつて高齢者に良いとされていた「きざみ食」は、バラバラでかみにくくまとまりにくく、かえって誤嚥しやすくなります。細かく刻む場合は、口の中で押しつぶせる程度のやわらかいものにし、あんかけなどでとろみをつけましょう。

 

b. 飲み込みやすくする工夫

  • 食材を小さく刻んだ場合、そのままだと、飲み込む前にのどの奥のほうに送りこまれてしまい、誤嚥しやすくなります。食塊をまとめるために、とろみをつけます。
  • 麺類は長いと咀嚼も嚥下もしづらいので、3〜5cm程度の長さに切ります。
  • 煮物は片栗粉などで煮汁にとろみをつけると、具材と汁気がからまってのどを通りやすくなります。
  • 汁物や水など、サラサラした液状のものは誤嚥しやすいため、とろみをつけます。
  • 温度も重要。温かいものはほどよい温かさで、冷たいものは冷たくして食べると、嚥下反射を促すといわれています。体温±20度が食べやすく、おいしさを感じる温度だといわれています。

嚥下食を作るコツとレシピアイディア

 上記の嚥下食ピラミッドで2-1~3の段階を中心に、嚥下食用の食べやすいムースの作り方のコツと、メニューのアイディアをお伝えします。

 食品をムース状・ゼリー状にする(ゲル化)には、寒天やゼラチンを使うのも良いですが、市販のゲル化剤を使うとより楽にできます。

主食:嚥下食ごはんの作り方

a.おかゆにゲル化剤を混ぜてペースト状にする

  1. 普通通りにごはんを炊きます。おかゆモードがあればそれを利用します。
  2. 1食分をあたたかい内にミキサーカップに入れ、ゲル化剤を加えて攪拌します。攪拌後もムラをなくすためにスプーンでよく混ぜます。冷凍保存もできます。

 

b.ゼラチン寒天を入れて炊く

  1. お米を水に浸け、炊く直前にゼラチンか寒天を入れます(ゼラチンだけだと匂いがある場合は、ゼラチン寒天〔伊那食品工業〕という商品も売られています)。
  2. 嚥下食ピラミッドで4~3の人は炊き上がりの柔らかさを確認してそのままでも。2以上の段階の人は、さらにミキサーにかけます。冷凍保存もできます。

 

【メニューのアイディア】
  • ピラフ:コンソメで炊き、最後はバターで香り付けをして
  • お寿司:整形済みの魚のムースと合わせて
  • 牛丼:整形済みの牛肉のムースと合わせて

主菜:嚥下食肉・魚料理の作り方

a.肉・魚介のムースを作る

◆肉

〔選び方〕

  • バラ肉などの脂が多い肉を選びます。
  • 鶏肉の鶏皮はのどにはりつくことがあるので取り除きます。
  • 挽肉は口の中でバラバラにならないよう、豆腐やデンプンなどのつなぎを使います。

 

〔作り方〕

  1. 肉を柔らかくするために、ヨーグルト・塩麹・炭酸水に漬けておいたり、市販の果物由来の酵素商品(例:大塚薬品工業『肉用ミオラ』など)を使用します。
  2. うまみを逃がさないように片栗粉や小麦粉をまぶします。
  3. フライパンで2.を焼きます。余分な脂はキッチンペーパーで取り、酒を加えて2~3分蒸し焼きにします。
  4. 3.をハサミで切りながらミキサーカップに入れ、ゲル化剤を加えてミキサーにかけます。粒の大きさは本人の状態に合わせます。固い場合はだし汁を少しずつ加えて調整します。

 

◆魚

〔選び方〕

  • 骨や筋が少なく、脂の多い魚を選びます。

 

〔作り方〕

  1. パサつきのある魚は、酒を振りかけておきます。余分な脂はキッチンペーパーで取り、酒を加えて2~3分蒸し焼きにします。
  2. 皮や骨を取り除き、身をほぐします。
  3. 2.をミキサーカップに入れ、ゲル化剤を加えてミキサーにかけます。粒の大きさは本人の状態に合わせます。
  4. 肉や魚のかたちに整形して、美味しそうに盛り付ける

 

【メニューのアイディア】
  1. ステーキ:肉ムースをステーキのかたちに成形して、さっと焼く
  2. サバの味噌煮:市販の缶詰を利用してムースを作る
  3. 豆腐ステーキ:豆腐をさっと焼いて、魚ムースのあんかけをかける

副菜:嚥下食野菜の作り方

a.野菜のムースを作る

  1. 葉物は下ゆでを、根菜類や乾物は味を煮含ませ、生野菜は皮を剥いておきます。玉ねぎはバターなどで炒めておいてもOK。冷凍するならムースを作る前段階で保存しましょう。
  2. 自然解凍したらミキサーに入れ、なめらかになるまで攪拌します。いも類や生野菜はゲル化剤を使うとよいでしょう。
  3. 整形するために、一度容器に入れて冷蔵庫で冷やし固めます。

 

b.乾物のムースを作る

  1. 干ししいたけやひじきなどの乾物も、水で戻したり煮たりしてあれば使えます。うまみが強いので、他の料理に合わせましょう。
  2. 小さく刻んでミキサーに入れ、ゲル化剤を加えてムース状にします。
  3. 整形するために、一度容器に入れて冷蔵庫で冷やし固めます。

 

c.整形して、美味しそうに盛り付ける

 

【メニューのアイディア】
  • バーニャカウダ:野菜ムースを成形して、ニンニクとアンチョビのオイルをかける
  • 食べるスープ:とろみをつけたオニオンスープに野菜のムースを加えて
  • 茶碗蒸し:青菜ときのこのムースを入れて、うまみを出す

手軽に使える嚥下食

1. キューピーやさしい献立(キューピー株式会社)

 食べやすさから生まれた介護食で、かむ力・飲み込む力に合わせて4段階(容易にかめる、歯茎でつぶせる、舌でつぶせる、かまなくてよい)のやわらかさが設定されています。

2. メディケア食品(マルハニチロ株式会社)

 レトルトの「もっとエネルギーシリーズ」(歯茎でつぶせる、舌でつぶせる)、冷凍の「簡単! おいしく! やわらか食シリーズ」(舌でつぶせる)、冷凍の「やさしい素材」(舌でつぶせる)、冷凍の「やさしいおかず」(舌でつぶせる)等を販売しています。

まとめ

  • 嚥下食は、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の基準を参考に、形態を判断するとよい。
  • かみやすく、まとめやすく、飲み込みやすくするため、切り方、下処理等、さまざまな工夫ができる。
  • 飲み込みやすくするために、その人に合った調理方法で嚥下食を作る。
  • ゼリー状にしたり、とろみをつけたりしやすい調整剤も販売されている。
  • 嚥下食をムース状にする場合は、柔らかさと粒度を本人の嚥下能力に合わせて調節する。
  • 介護食のレトルトや冷凍食品等も販売されている。

 嚥下食をつくったり、用意したりするにあたって、必要な知識をまとめました。嚥下食を実際に作ってみた方は、ぜひ感想をSNSなどでシェアしてくださいね。

(編集:編集工房まる株式会社)


監修者 野溝明子

監修者:野溝朋子

医学博士。鍼灸師。介護支援専門員。

東京大学理科一類より同理学部、同大学院修士課程修了(理学修士)、東京大学医学部(養老孟司教室)で解剖学を学んだ後、東京大学総合研究博物館(医学部門)客員研究員。医療系の大学で非常勤講師を務めるほか、鍼灸師として個人宅や施設などへ出向き施術を行っている。

著書に『看護師・介護士が知っておきたい 高齢者の解剖生理学』『セラピストなら知っておきたい解剖生理学』『介護スタッフのための 安心! 痛み緩和ケア』など。