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やってみよう!嚥下体操

 飲食物を飲み込む動作を「嚥下」といいます。普段私たちが何気なく行っている「嚥下」には様々な器官や神経が関わっており、それらのいずれかに異常が生じると正しく「嚥下」ができなくなります。その状態を「嚥下障害」と呼び、高齢者に多く見られる症状の一つです。「嚥下障害」は誤嚥性肺炎などの深刻な合併症を生じることがあり、できるだけ嚥下機能を維持していきたいものです。

今回は、「嚥下」の機能を維持し低下した機能を改善させるための「嚥下体操」や、嚥下機能に関わるリハビリテーションについて詳しく解説します。

目次

  1. 嚥下体操の目的とは
  2. 嚥下体操は食事前に
  3. 嚥下体操をやってみましょう
  4. 他にもある嚥下障害のリハビリテーション
  5. まとめ

嚥下体操の目的とは

嚥下機能の低下

嚥下機能の低下は様々な原因によって引き起こされますが、年齢を重ねるごとに発症するリスクが高くなります。このため、超高齢化社会に突入した日本では嚥下障害に悩む人が多くいます。誤嚥性肺炎は、日本人の死因第7位(平成29年)です。 そこで、嚥下機能低下の予防・改善を目指すリハビリテーションである「嚥下体操」が注目されています。

「嚥下体操」は、嚥下に関与する唇・顎・頬・舌・のどを積極的に動かすことで、これらの器官の運動能力や筋力アップをし、結果として嚥下機能低下の予防・改善が期待できるのです。 ただし、既に誤嚥が始まっている人などは、無理な体操をすると状況が悪化する可能性があるため、医師やリハビリテーション専門職に相談の上実施してください。

嚥下体操は食前に

「嚥下体操」は通常のリハビリテーションと同様、一度に長時間行うのではなく、毎日少しずつ積み重ねていくことが大切です。 一回の「嚥下体操」に要する時間は3分程度、スキマ時間に行うのがおススメですが、できるだけ食前に行うようにしましょう。

嚥下に関連する筋肉は使わない時間が長いほど、動きが悪くなり、前回の食事時から使われていないことで動きが鈍くなっています。実際、誤嚥は食事を始めた時に起こりやすいことがわかっています。

誤嚥を防ぐためにも、食前にしっかりと「嚥下体操」で準備体操を行い、嚥下に関連した筋肉の動きをスムーズにしておくことが大切なのです。

嚥下体操をやってみよう

実際にどのような「嚥下体操」を行えばいいのでしょうか。次の手順は藤島式と呼ばれる嚥下体操の一種です。 ただし、首や肩が十分に動かない場合は、医師や理学療法士の指導の下、無理のない範囲で行うことが大切です。

  1. 深呼吸を繰り返す
  2. 首を回す
  3. 首を左右に倒す
  4. 肩を上げ下げする
  5. 両手を上げて伸びをする
  6. 頬を膨らませたりしぼめたりする(2~3回ほど繰り返す)
  7. 舌で左右の口角に触れる(2~3回ほど繰り返す)
  8. 息がのどに当たるように強く吸って止め、3秒後に強く吐く
  9. パパパ、ララララ、カカカカとゆっくり言う
  10. 深呼吸を繰り返す

 

嚥下体操

 

〔解説〕

1,2,3,4,5,8,10深呼吸による胸の運動や首、肩の運動は嚥下とは関連しないようにも思えますが、胸の運動をスムーズに行えるようにすることで、万が一誤嚥した際に咳が出やすくする効果が期待できます。

2,3,4,5首や肩の筋肉の緊張をほぐすことで誤嚥しやすい体勢を避けることが可能となり、嚥下に関連する器官のリラクゼーション効果もあるとされています。

6,7,9頬や舌など口の中を中心とした運動は、嚥下に関連する器官の筋肉をほぐし、鍛えることも目的に行うものです。

この1~10の運動を毎食前に一日三回以上繰り返しましょう。

他にもある嚥下障害のリハビリテーション

嚥下障害に対するリハビリテーションには「嚥下体操」以外にも様々なものがあります。 リハビリテーションの方法は大きく以下の2つに分けられます。

  • 間接訓練:嚥下に関連する器官を鍛えたり刺激したりすることで嚥下機能の維持・改善を図る
  • 直接訓練:食べ物を用いて実際に嚥下の練習を行う

それぞれの主なリハビリテーション方法には次のようなものが挙げられます。

間接訓練

「嚥下体操」も間接訓練の一種です。その他にも以下のように嚥下に関与する器官を鍛えるのに有効とされるリハビリテーションがあります。

のどのアイスマッサージ

のどのアイスマッサージの解説

氷水でよく冷やした綿棒や口腔ケア用スポンジなどを、軟口蓋(のどちんこがある部位)や舌・のどの奥に当てて刺激し、嚥下反射を促す訓練です。

正常な嚥下反射が起こりにくく、のどに食べ物が溜まりやすい人や誤嚥しやすい人に適しています。

裏声発声訓練

可能な限りの高い声(裏声)を数秒間出し続けることで、声帯などのどの奥の筋力をアップさせる訓練です。

のどの奥の筋力が弱かったり動きが悪かったりして嚥下障害が起こりやすい人に適しています。

頭部挙上訓練

仰向けに横になった状態で両肩を床に付けたままつま先を見るように頭だけを上げ、その位置を1分間キープした後、頭を元の位置に下げる運動を繰り返す訓練です。のどの奥の筋肉を鍛え、嚥下反射が生じた際に食道の入り口を開きやすくする効果があります。

高い効果が期待できるリハビリテーションですが、身体への負担も大きいため必ず医師や理学療法士の指導の下で行いましょう。

声帯閉鎖訓練

両手で壁やいすなどを強く押しながら、できる限りのどに強い力を入れて発声する訓練です。声帯の動きをスムーズにして、嚥下反射時に飲食物が気管内に流入するのを防ぐ効果が期待できます。 飲食時にむせこみやすく、誤嚥している可能性が高い人が適しています。また、座った状態で介助者の腕を引っ張りながら行うこともできますので、足腰が悪い人でも行うことができます。

ブローイング

コップやペットボトルなどに水を入れ、ストローでできるだけ長い時間拭き続ける訓練です。胸郭の運動を強化し、嚥下に関与するのどの筋肉を鍛える効果があります。ある程度の腹筋も必要とするため、姿勢を保持する力もつけることができます。  

誤嚥した時に十分なむせ込みができない人、身体全体の筋力が低下している人に適しています。

直接訓練

食べ物を用いたリハビリテーションです。開始する場合は内視鏡を用いて誤嚥の有無を確認する「嚥下内視鏡検査」を行うことが多く、明らかな誤嚥があるケースでは直接訓練ができないこともあります。唾液などが気管に流入している場合も飲食物が誤嚥する可能性があるので、注意しながら訓練を進めていく必要があります。

具体的には、とろみがついたゼリーなどを用いて飲み込みの練習を行い、誤嚥の危険性があるとみなされる場合にはそれぞれに合った姿勢や嚥下のタイミング、回数の調整などの対策方法を探っていきます。 直接訓練は誤嚥する危険を伴うので、行う場合は必ず医師や理学療法士などの指導に従い、むせ込みが続く場合はリハビリテーションを一旦中止しましょう。

まとめ

超高齢化社会に突入した日本では、嚥下障害を抱える高齢者は年々増えています。介護の現場ではいかに高齢者の嚥下機能の低下を予防し、嚥下機能を改善していくかが大きな課題となっています。嚥下機能を維持・改善するためには今回ご紹介したようなリハビリを継続して行うことが大切です。 ただし、嚥下体操自体が唾液などの誤嚥を引き起こすこともありえます。無理のない範囲で行っていきましょう。

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(編集:編集工房まる株式会社)

 

監修者成田 亜希子

監修 成田 亜希子(なりた・あきこ) 

2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。