居宅療養管理指導とは?自宅で医療専門職から管理や指導を受けられるサービス

疾患があって自宅で療養しているけれど、事情があって通院できない…。居宅療養管理指導は、そんな高齢者や家族を支える介護保険サービスです。本記事では、居宅療養管理指導の内容や利用方法を解説します。在宅での療養生活を支えるサービスなので、ぜひ確認しておきましょう。

居宅療養管理指導を受ける女性

目次

  1. 居宅療養管理指導とは?知っておきたい基本ポイント
  2. 居宅療養管理指導を受けられる対象者
  3. 居宅療養管理指導のサービス内容
  4. 往診や訪問診療との違い
  5. 居宅療養管理指導でかかる料金
  6. 居宅療養管理指導の利用方法
  7. 通院できない方や困り事のある方に

居宅療養管理指導とは?知っておきたい基本ポイント

まずは、居宅療養管理指導の基本ポイントを確認していきましょう。

医療の専門家の管理や助言を受けられるサービス

認知症があって病院の待ち時間が過ごせない方や寝たきりの方など、事情があって通院できない方が、自宅で安心して療養生活を続けるための介護保険サービスです。利用者の自宅に主治医や歯科医師、薬剤師、栄養管理士、歯科衛生士などの医療専門職が同意を得て訪問し、利用者や家族に対して療養上の管理や日常生活・介護の指導を行います。

主治医や歯科医師による居宅療養管理指導は、一般的に訪問診療や往診の際に行われます。通院しなくても利用者の心身の状態や病状の経過を診てもらえること、生活環境を把握した上での管理や指導が受けられることなどが、自宅に医療専門職が訪れるメリットです。また、居宅療養管理指導では、ケアプランの作成に役立てるために、ケアマネジャーに病状や経過、日常生活や介護の留意事項などの情報提供を行います。

医療保険サービスに訪問薬剤管理指導、訪問栄養食事指導などの同様のサービスがありますが、居宅療養管理指導との併用はできません。

居宅療養管理指導を受けられる対象者

居宅療養管理指導のイラスト

それでは、居宅療養管理指導を受けられる対象者を確認しましょう。

居宅療養管理指導が受けられる人

介護保険サービスの居宅療養管理指導を利用できるのは、利用者や家族の事情で通院が困難で要介護1~5の認定を受けている人です。要支援1、2の方は、介護予防居宅療養管理指導が利用できます。

居宅療養管理指導のサービス内容

医療サービスのイメージ

居宅療養管理指導では、職種によって受けられるサービス内容と月ごとに訪問できる回数が異なります。職種ごとにサービス内容を見ていきましょう。

医師や歯科医が行う居宅療養管理指導

【サービス提供回数】月に2回以内

主治医や歯科医が利用者の自宅を訪れ、療養上の管理や指導を継続的に行います。ケアマネジャーにケアプランの作成に必要な情報を提供したり、利用者や家族に日常生活や介護サービスを使う上での留意点について指導やアドバイスをしたりします。

薬剤師が行う居宅療養管理指導

【サービス提供回数】
病院または診療所の薬剤師:月に2回以内
薬局の薬剤師:月に4回以内(がん末期や中心静脈栄養を受けている利用者は月に8回以内)

服薬について困り事のある利用者や家族に対し、主治医や歯科医師の指示に基づいて薬剤師が自宅を訪問し、服薬管理を行います。 「薬がきちんと飲めていない」「薬がわかりにくい」などの困り事がある場合には、ケアマネジャーや主治医に相談をしましょう。いつ、どの薬を飲んだらいいのかわかりやすくまとめてくれたり、飲み忘れないための指導を受けたりできます。

管理栄養士が行う居宅療養管理指導

【サービス提供回数】月に2回以内

栄養や食事について困り事のある利用者や家族に対し、主治医や歯科医師の指示に基づいて管理栄養士が自宅を訪問し、栄養や食事の管理を行います。 「低栄養と診断された」「疾患があり治療食が必要だがよくわからない」「ご飯がうまく食べられない」などの困り事がある方は、ケアマネジャーや主治医に相談をしましょう。栄養補助食品の提案、調理指導、食事内容や量の指導、食事の際の姿勢の指導などが受けられます。

歯科衛生士が行う居宅療養管理指導

【サービス提供回数】月に4回以内

歯科医師の指示に基づいて歯科衛生士が利用者の自宅を訪れ、利用者や家族に対して義歯の清掃や口腔ケアに関する指導を行います。どんな姿勢だとご飯が食べやすいのか、利用者に適した食事の形態はどんなものかなどの、摂食や嚥下機能(飲み込む機能)に関する指導も受けられます。

往診や訪問診療との違い

考える看護師

主治医などの医療専門職が自宅を訪れるサービスには、定期的に行われる訪問診療や急病などの理由で行われる往診があります。居宅療養管理指導との違いを確認しておきましょう。

適用される保険の違い

訪問診療や往診時に提供されることが多い居宅療養管理指導ですが、適用される保険が異なります。居宅療養管理指導に適用されるのが介護保険。訪問診療や往診に適用されるのが、医療保険です。

訪問時のサービスの違い。

訪問診療や往診では、投薬や検査、処置などの医療行為、疾病の治療の指導、診療計画による医学的管理が行われます。居宅療養管理指導には、こうしたサービスは含まれません。

ケアマネジャーへの情報提供

居宅療養管理指導では、訪問診療や往診で得た情報は、必ず文書やサービス担当者会議などでケアマネジャーに提供されています。 訪問診療や往診を受けても、ケアマネジャーへの情報提供がない場合には、居宅療養管理指導費は発生しません。

居宅療養管理指導でかかる料金

介護とお金

居宅療養管理指導を利用すると、どのくらいの費用が掛かるのでしょうか。その金額を見ていきましょう。

居宅療養管理指導の1回ごとの基本料金

居宅療養管理指導は、以下の金額となります。要介護1~5、要支援1、2の区別なく同じ金額です。

医師が行う場合
*医療保険による訪問診療を受けている場合
298円
歯科医師が行う場合
医師が行う場合
*医療保険による訪問診療を受けていない場合
516円
薬剤師が行う場合 病院または診療所の 薬剤師が行う場合 565円
薬局の薬剤師が行う場合 517円
当該指定居宅療養管理指導事業所の管理栄養士が行う場合 544円
歯科衛生士が行う場合 361円

※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。

※同じ月に2人以上9人以下もしくは10人以上、同じ建物(有料老人ホーム、認知症対応型共同生活介護/認知症高齢者グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、マンションなどの集合住宅など)に居住している複数の利用者に対して行う場合には金額が下がります。

※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。

その他の料金

訪問診療や往診、投薬などの費用は医療保険から請求されます。また、医師や歯科医師などが訪問する際にかかった交通費も、実費で請求されます。

居宅療養管理指導の利用方法

訪問医療のイメージ

最後に、居宅療養管理指導を利用する基本手順を確認しておきましょう。

居宅療養管理指導の利用方法

要支援1、2または要介護1~5の認定を受けている場合、利用手順は以下のようになります。

  1. 担当のケアマネジャーか主治医に相談する
  2. ケアマネジャーがケアプランを作成
  3. 必要に応じて主治医が薬剤師などに指示
  4. サービス開始

※上記は基本的な流れです。居宅療養管理指導は、ケアプランになくても提供できるサービスですので、利用の流れは状況によって異なります。

通院できない方や困り事のある方に

事情により通院が困難であっても、医療専門職から困り事へのアドバイスや、日常生活や介護サービスについての指導を自宅で受けることができるのが居宅療養管理指導です。さらに、医師からケアマネジャーに、治療の経過や病状といったケアプランの作成に必要な情報が提供されます。

通院ができなくて困っている方や、医療に関する困り事がある方は、ケアマネジャーや主治医に相談してみてはいかがでしょうか。

 
監修者:鵜沢静香
監修者:鵜沢静香

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。