夜間帯に介護サービスが必要になるのは、一人暮らしや老老介護の世帯だけではありません。仕事や育児をしながら介護をしている家族にとって、夜の介護は大きな負担になるものです。本記事では、夜間の介護を助ける夜間対応型訪問介護の内容や費用、他のサービスとの違いをまとめています。
- 夜間対応型訪問介護とは?知っておきたい基本ポイント
- 夜間対応型訪問介護の対象者
- 夜間対応型訪問介護のサービス内容
- 他の介護保険サービスとの違い
- 夜間対応型訪問介護でかかる料金
- 夜間対応型訪問介護の利用方法
- ケアコール設置と夜間の定期訪問で安心して眠りたい方に
夜間対応型訪問介護とは?知っておきたい基本ポイント
夜間対応型訪問介護の基本ポイントを確認していきましょう。
夜間対応型訪問介護は夜間にも介護が必要な方をサポート
2006(平成18)年にスタートした夜間対応型訪問介護とは、介護ニーズが高い方や昼夜逆転している方、認知症の方などに対して、夜間(午後6時から翌朝8時)に訪問介護を行う介護保険サービスです。日中の訪問介護と併用できます。
夜間帯に訪問介護員(ホームヘルパー)が定期的に訪問し、排泄介助や体位変換、安否確認を行います。緊急時には専用端末から連絡をすれば、必要に応じてサポートを受けられます。利用者のニーズに合わせた夜間帯の定期的な訪問サービスだけではなく、もしもの時に連絡ができて、必要なサービスが受けられるというのがメリットです。緊急時の連絡については、夜間だけではなく24時間のサポートができる事業所もあるので、詳しくはケアマネジャーにご確認ください。
自宅で暮らすので、介護付き有料老人ホームと比べて費用が抑えられます。ただし、1回の訪問ごとに料金がかかるので、利用の仕方によっては金額が高くなってしまう場合があります。
夜間対応型訪問介護事業所の2つのタイプ
夜間対応型訪問介護事業所には、緊急時に専用端末から連絡を受ける「オペレーションセンター」を設置している場合と、設置せずに訪問介護員(ホームヘルパー)がオペレーターを兼務している場合があり、月々の利用料金が異なります。事前に確認をしておきましょう。
オペレーションセンターでは、介護福祉士、社会福祉士、看護師、ケアマネジャーなどの専門資格を持ったオペレーターが連絡を受け付けます。
夜間対応型訪問介護の対象者
夜間対応型訪問介護を受けられる対象者を確認しましょう。
夜間対応型訪問介護が受けられる方
要介護1以上の認定を受けた方が対象です。自立や要支援1、2の方は受けられません。
また、介護が必要になっても住み慣れた地域で生活できるように支援する事を目的とした「地域密着型サービス」のため、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所と同じ市区町村に住んでいる必要があります。違う市区町村の事業所のサービスは受けられません。
夜間対応型訪問介護のサービス内容
夜間対応型訪問介護のサービス内容を見ていきましょう。
定期巡回サービス
利用者の心身の状態や家族の都合に合わせて、訪問介護員(ホームヘルパー)が定期的に訪問して、以下のような短時間のサービスを行います。
- 安否確認
- 配膳や下膳
- 服薬介助
- 就寝のお手伝い(着替え、水分補給、ベッドへの移動など)
- オムツ交換やトイレ誘導などの排泄介助
- 体位変換 など
随時訪問サービス
転倒や失禁、体調変化などの際に、利用者や家族がケアコール(緊急通報用端末)を利用して連絡できるサービスです。必要に応じて訪問介護員(ホームヘルパー)による訪問や救急車の手配などの対応をします。事業所がオペレーションセンターを設置しているかどうかにかかわらず、ボタンを押すだけでオペレーターや訪問介護員(ホームヘルパー)につながる端末などが、事業所から利用者に配布されます。
サービスが頼める時間帯
夜間対応型訪問介護のサービスが受けられるのは、午後6時から翌朝8時までです。それ以外の時間帯でも、随時対応サービスを提供している事業所もあります。
夜間対応型訪問介護の事業所が日中の通報を受け付けた場合、提携している別の訪問介護事業所が随時訪問を行う場合があります。
他の介護保険サービスとの違い
定期巡回・随時対応型訪問介護看護との違い
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、定期的な訪問と随時訪問のサービスが受けられる点では夜間対応型訪問介護と同じです。
日中も定期訪問を受けられることや訪問回数に関わらず一定の金額であること、同じ事業所または提携している事業所から訪問看護が受けられることが、夜間対応型訪問介護と異なる点です。
夜間だけでも訪問の回数が多い方や24時間の定期訪問サービスが必要な方、医療ニーズが高い方は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用も含めて、ケアマネジャーに相談してみるといいでしょう。
訪問介護との違い
介護保険には要介護度ごとに支給限度額があります。その範囲内であれば、日中夜間を問わずに訪問介護サービスを受けることが可能です。ただし、夜間帯のサービスは割増料金となります。
夜間対応型訪問介護のように、事業所と緊急連絡用の端末でやり取りすることはありません。
夜間対応型訪問介護でかかる料金
夜間対応型訪問介護は、ひと月当たりの料金と1回ごとの訪問に料金がかかるサービスです。どのくらいの費用が掛かるのか、その金額を見ていきましょう。
夜間対応型訪問介護の1回ごとの基本料金
夜間対応型訪問介護費は、要介護度に関わらず以下の金額となります。
オペレーションセンターを設置している場合 | ひと月当たりの料金 | 1025円 |
定期巡回サービス(1回) | 386円 | |
随時訪問サービス(1回) | 588円 | |
オペレーションセンターを設置していない場合 | ひと月当たりの料金 | 2800円 |
※自己負担割合が1割の方の金額です。一定の所得がある場合は、所得に応じて2割または3割負担となります。
※上記は基本的な利用料(「介護報酬の算定構造」令和3年4月改定版)です。サービス内容、サービス提供事業所の所在地などによって金額は異なります。詳しくは担当のケアマネジャー、もしくは市区町村の高齢者窓口や地域包括支援センターにお問い合わせ下さい。
上記の金額に加えて、利用者の必要に応じて「24時間通報対応加算」などが追加されます。
夜間対応型訪問介護の利用方法
最後に、夜間対応型訪問介護を利用する基本手順を確認しておきましょう。
夜間対応型訪問介護の利用方法
要介護1~5の認定を受けている場合、利用手順は以下のようになります。
- ケアマネジャーか地域包括支援センターに相談する
- ケアマネジャーがサービス提供事業者を選び、ケアプランを作成する
- ケアマネジャーやサービス提供事業者と話し合い、サービスの内容や利用頻度、注意事項を確認する
- サービス内容が決定したら、サービス提供事業者と契約を交わす
- 指定日時よりサービス開始
※上記は基本的な流れです。サービス提供事業所やケアマネジャー、利用者の状況によって異なります。
ケアコール設置と夜間の定期訪問で安心して眠りたい方に
夜間対応型訪問介護は、午後6時から翌朝8時までの夜間帯に訪問介護員(ホームヘルパー)が定期的に自宅を訪問する介護保険サービスです。緊急時には設置しているケアコールから連絡ができるので、一人暮らしや老老介護の方でも安心して生活できます。「日中は人の目があるけど夜間帯が心配」「夜は安心して眠りたい」と考えている方は、一度ケアマネジャーに相談してみてはいかがでしょうか。
※この記事は2021年3月時点の情報で作成しています。
訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。