病気のサインかも?あなどれない高齢者の“むくみ”

病気のサイン?高齢者のむくみについて

世代を問わずむくみに悩まされている人はいるものです。加齢によってもむくみは起こりやすくなりますが、病気の症状として現れるむくみもあるため、注意が必要です。この記事では、むくみの症状や原因、対策についてまとめました。ぜひご参考ください。

 

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高齢者のむくみとは

高齢者のむくみとは

むくみとは、何らかの原因で細胞と細胞の間の水分が異常に多くなった状態のことです。医療用語では浮腫(ふしゅ)と表します。朝起きると顔がはれぼったかったり、夕方に足がむくんで靴がきつくなったりと、むくみは年齢に関わらず起こる現象です。

若い頃のむくみと、年齢を重ねてからのむくみでは原因や注意点が異なります。

高齢者にむくみが起こりやすい場所

水分は重力で下にたまるため、身体の下の方にむくみが起こりやすくなります。

イスに座っていることが多い方は夕方になると膝から下がむくみやすく、寝た状態でいる時間が多い方は背中や顔がむくみやすくなります。

座りっぱなし、横になりっぱなしなど同じ姿勢でいる時間が長い方、運動をしていない方などは特にむくみが起こりやすいので注意しましょう。

むくみの症状

足にむくみが出ると、足のだるさや重さ、靴がきついなどの違和感が現れます。

むくんでいるかどうかをチェックするには、足のすね(むくんでいると思われる場所)を皮膚の上から指で5秒以上押してみてください。へこんでなかなかもどらない場合には、むくんでいると考えられます。靴下の跡がいつまでも残るのも、むくみによるものかもしれません。病気の種類によっては、押した痕が残らないむくみもあるので、あくまで目安としてご利用ください。

高齢者のむくみの原因

高齢者のむくみはなぜ起こるのか。原因について解説

なぜ、むくみは起こるのでしょうか。原因を見ていきましょう。

病気が原因ではないむくみ

加齢

水分は血液と一緒に体の中を巡回しています。不要な水分は体外に排出されるのですが、加齢によって身体機能が低下することで水分の排出が滞ってむくんでしまいます。

廃用性浮腫

廃用性浮腫とは、体を動かさないことによって水がたまって生じるむくみで、多くがふくらはぎの筋肉が衰えたことによる膝から下のむくみです。むくみに左右差はなく、特に高齢者に多くみられます。ふくらはぎの筋肉は下に溜まった血液やリンパ液をポンプのように心臓に押し出して循環させており、運動量の減少によりこのポンプ作用がうまく働かなくなると足がむくみやすくなります。

車いすやベッド上で同じ姿勢でいることが多い高齢者は、ふくらはぎの筋肉を使わなくなるため廃用性浮腫になりやすい状態です。

その他、脳梗塞などで麻痺があると麻痺側にむくみが出やすく、寝たきりの方だと背中側にむくみがみられることがあります。

その他

飲酒や低栄養、塩分の取りすぎなどもむくみの原因になります。

病気によるむくみ

むくみは病気のサインである可能性もあります。下記に例をあげます。

心不全

心臓の機能が低下すると、血液やリンパ液が心臓に戻りにくくなり足に留まってしまいます。足のむくみの他に、呼吸困難や動悸、息切れなどの症状が現れます。

腎不全

症状が現れにくい腎臓の病気ですが、初期症状に足や手、顔などのむくみが見られます。むくみの他に血尿、尿の泡立ちなどの尿の異常が現れます。

肝硬変

肝硬変は高齢者に多く見られる病気のひとつです。肝機能の低下が進み非代償性肝硬変になると、足がむくみ始め、腹水による腹部の膨らみなどの症状が現れます。

リンパ浮腫

先天性のものや原因不明のものもありますが、多くががん治療などに伴って現れる症状です。治療部位に近い皮膚の下にリンパ液が溜まってむくんでしまいます。

その他

副腎皮質ステロイド、非ステロイド抗炎症剤、カルシウム拮抗剤(高血圧の薬)などの薬剤の副作用よる薬剤性浮腫、血管炎やアレルギーなどによる炎症性浮腫、深部静脈血栓症や下肢静脈瘤などによる静脈性浮腫などがあります。

むくみの対策と予防方法

むくみの対策と予防方法

むくみの改善や予防に効果が期待できる方法を確認しておきましょう。

運動を行いましょう

ウォーキングや体操などでふくらはぎの筋肉を鍛えて、血液やリンパ液を心臓に戻すポンプ機能の向上を目指しましょう。運動が難しい方は、マッサージや足浴も効果的です。

ただし、無理はしないように作業療法士などの専門家の意見を聞きながら行いましょう。通所リハビリ(デイケア)や訪問リハビリなどの利用を希望される場合には、ケアマネジャーに相談をしてください。

生活を見直しましょう

座りっぱなしの方は、リクライニングや足置きを使用して足を高く上げるようにしましょう。可能であれば、時々立ち上がって歩く習慣をつけると良いです。

また、水分や塩分を取りすぎている方は食生活や味付けを見直してみましょう。バナナやもも、りんご、ひじきなどの食品に含まれているカリウムは、塩分の排出を促す働きがあります。ナッツ類やかぼちゃ、ほうれん草などに含まれるビタミンEも血流を良くする働きがあるのでお勧めです。

弾性ストッキングを着用しましょう

日中に座っている時間が長い場合には、足を圧迫してむくみを改善する弾性ストッキングを利用してみると良いでしょう。

むくみで病院にかかるには

何らかの病気でむくみが起きている場合には、原因となっている病気の治療を優先しましょう。むくみが慢性化していたり他にも症状があったりするけれど、どの診療科にかかったらいいのかわからない場合には、かかりつけ医に相談をしてください。薬剤が原因になっていることもあるので、お薬手帳は必ず持参するようにしましょう。

まとめ

むくみは、ふくらはぎの筋肉が衰えたり同じ姿勢でいる時間が長かったりする高齢者によくみられる状態です。通常のむくみは、ウォーキングなどの運動やマッサージ、日常生活の見直し、弾性ストッキングの着用などで改善が期待できます。

ただし、むくみは病気の症状として現れることもあります。他にも気になる症状があるようであれば、病院を受診する際にむくみがあることも伝えるようにしましょう。

※この記事は2020年7月時点での情報をもとに作成しています

医師:谷山由華
監修者:谷山 由華(たにやま ゆか)

医師:谷山 由華(たにやま ゆか)

【経歴】
・防衛医科大学校医学部医学科卒業
・2000年から2017年まで航空自衛隊医官として勤務
・2017年から2019年まで内科クリニック勤務
・2019年から内科クリニックに非常勤として勤務、AGA専門クリニック常勤

内科クリニックでは訪問診療を担当。内科全般、老年医療、在宅医療に携わっている