ケアマネジャー(介護支援専門員)とは

在宅介護をしている人にとって、介護について相談できる身近な専門家であるケアマネジャー(介護支援専門員)ですが、どんな存在なのかよくわからないという方もいることでしょう。この記事では、介護家族が知っておきたいケアマネジャーの仕事内容や受験資格などについてまとめました。

ケアマネジャー(介護支援専門員)とは

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、2000年に「介護保険制度」が導入された際に誕生した資格です。略してケアマネとも呼ばれています。

要介護認定を受けた高齢者は、介護保険による介護サービスを利用するため、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらいます。ケアプランは、個人や家族の状態や環境、ニーズ、目標をふまえて作成されるものです。ケアマネジャーは、要介護者や家族を良く理解してくれている介護の専門家だと言えるでしょう。

安心介護内の記事でも、「詳細はケアマネジャーに確認してください」といった文章をよく見かけます。ケアマネジャーは介護を受けている人や介護家族にとって、最も身近な相談窓口であり、理解者だと言えるでしょう。

ケアマネジャーの役割

ケアマネジャーは、介護認定を受けた要介護者やその家族からの相談に応じたり、利用者の希望をヒアリングしたうえで、適切な介護サービスが受けられるようにケアプランを作成し、サービス提供事業者との連絡や調整を行ったりします。

介護保険サービス以外でも、自治体が提供している紙おむつ支給や宅食サービスなどの利用を、必要に応じて検討します。

ケアマネジャーの所属場所

ケアマネジャーは、居宅介護支援事業所、特別養護老人ホームなどの介護保険施設、介護付有料老人ホームなどの施設に所属しています。在宅で生活をしている場合には、居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプランを作成します。施設に入所している場合には、その施設に所属しているケアマネジャーです。
>>居宅介護支援事業所とは

 

近隣にある居宅介護支援事業所の連絡先などについては、地域包括支援センターまたは市区町村の窓口などに問い合わせると教えてもらえます。

ケアマネジャーになれる人

ケアマネジャーは、各都道府県が管轄している介護支援専門員実務研修受講試験に合格しさらに、87時間の研修を受けることで取得できる資格です。

【介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格】

  • 介護福祉士、看護師、医師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、栄養士などの国家資格があり、実務経験が5年以上かつ900日以上従事した人
  • 生活相談員、支援相談員、相談支援専門員などの相談援助業務に従事し、実務経験が5年以上かつ900日以上従事した人

以前は介護業務の経験年数によって、介護職員初任者研修やホームヘルパー2級の資格所有者、無資格者でも受験資格が得られましたが、2018(平成30)年からは、介護職からケアマネジャーになるには、国家資格である介護福祉士の資格取得が必須となっています。

ケアマネジャーによって得意分野が異なることも

ケアマネジャーの受験資格は複数あります。そのため一言で「ケアマネジャー」と言っても、それまでの経歴や所有資格は異なるので、得意分野が異なります。

「認知症ケアに慣れている人がいい」「持病があるので医療系の知識がある人がいい」など、希望するケアマネ像をあらかじめ考えておき、担当者を決める際には複数の候補と面談したうえで絞り込むといいでしょう。

ケアマネジャー(介護支援専門員)の仕事内容

ケアプランの作成や管理・介護サービス業務

ケアマネジャーは、どのような仕事をしているのでしょうか。居宅介護支援事業所に所属しているケアマネジャーの業務を見ていきましょう。

要介護認定に関する業務

介護保険による介護サービスを利用するためには、地域包括支援センターや市区町村の介護保険関連の窓口にて申し込みをして、要介護認定を受ける必要があります。

居宅介護支援事業所のケアマネジャーに要介護認定の申請の代行を頼むことも可能です。もちろん、申請の代行を頼んだら、必ずその居宅介護支援事業所と契約をしなくてはいけないわけではありません。

また、要介護認定の訪問調査についても、市区町村から委託を受けてケアマネジャーが行うことがあります。

ケアプランの作成

居宅介護支援事業所のケアマネジャーにとって大切な業務となるのが、要介護1~5の方のケアプランの作成です。ケアプランは、介護保険サービスを利用するのに必ず必要です。要介護者にはどのようなサービスが必要なのかを、本人や家族のニーズを調査・分析(アセスメント)し、目標を設定したうえでケアプランは作成されます。

>>ケアプランとは 

 例えば、「自宅のお風呂にひとりで入るのが不安だ」という場合には、通所介護(デイサービス)を利用してお風呂に入るのか、手すりやシャワーチェアなどを導入し、ホームヘルパー(訪問介護員)の手を借りてお風呂に入るのかを、それぞれの目標や要望、環境を基に決めて、ケアプランを作成します。

実際に介護サービスが開始されれば、月に1度は担当している要介護者の自宅を訪問し、心身の状態や困っていることがないかをモニタリングします。必要に応じてケアプランを修正します。

1人のケアマネジャーが担当するのは、基準として35人までです。40人を超えると報酬は減額されてしまいます。

居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当するのは、要介護1~5の方ですが、地域包括支援センターからの委託を受けて、要支援1、2の方の介護予防ケアプランの作成を行うこともあります。 

サービス事業者との連絡調整

「急にショートステイが必要になった」、「病院で入浴後に塗る薬が処方された」などの時に、ショートステイ先を探したり、入浴を担当するデイサービスや訪問介護事業者に連絡をしたりといったサービス事業者との連絡調整を行ってくれます。

要望やクレームについては、本人や家族から直接伝えるのは難しいものですが、ケアマネジャーから連絡をしてもらうことも可能です。逆に、サービス提供事業者からの本人や家族への要望やクレームを、ケアマネジャーを通して聞かされることがあります。

毎月の給付管理

サービスを提供した事業所に介護給付が行われるように、国民健康保険団体連合会に必要書類を提出します。

ケアマネジャーができないこと

ホームヘルパーが行うような要介護者への身体介護や生活支援などを、ケアマネジャーが行うことはできません。

【身体介護】排泄介助、食事介助、着替え介助、入浴介助、洗面介助、体位変換、移動介助など
【生活支援】住居の掃除、食事の用意、洗濯、買い物代行など

つまりケアマネジャーができるのは、どのような介護サービスを受けるかの計画を立てるところまで。実際に介護を行うのは、ホームヘルパー(訪問介護員)などの仕事になります。

ケアマネジャー(介護支援専門員)はなぜ必要?

ケアプランの作成は、本人や家族が行うことも可能です。すべて自分で計画をするので、介護サービスや事業者を選択する自由度が上がるのがメリットだと言えるでしょう。

しかし、ほとんどの人が居宅介護支援事業所と契約し、ケアマネジャーにケアプランの作成を依頼しています。ケアマネジャーを利用するメリットには、どんなものがあるのかを上げていきましょう。

ケアマネジャーを利用するメリット

ケアマネジャーを利用するメリットには、次のようなものがあります。

  • 知識や経験があるケアマネジャーにお願いをした方が、最適な計画を提案してもらえる可能性が高い
  • ケアマネジャーの業務にかかわる部分は介護保険ですべてカバーされるため、無料で利用できる
  • 給付管理など、毎月必要な書類の作成を任せられる
  • 本人や家族が直接言いづらい要望やクレームを、ケアマネジャーが間に入ってサービス事業者に伝えてくれる

要介護度によって、月に利用できる介護サービスの費用の上限が決まっているため、ケアプランは費用を計算しながら作成する必要があります。また、毎月の書類の提出や各介護サービス事業所とのやり取りも、介護をしながら行うのは難しいものです。費用負担なく利用できるので、居宅介護支援事業所と契約をしてケアマネジャーを利用するのがおすすめです。

ケアマネジャーに交代してもらいとき

得意分野や経験の異なるケアマネジャーは、もちろん個性もそれぞれなので、やはり「合う・合わない」があるのも事実です。ケアマネジャーにはさまざまな相談にのってもらう必要があるため、可能であれば話し合いで解決したいものですが、合わないと思った時には遠慮なく申し出ると良いでしょう。

本人に伝えにくい場合は、地域包括センターや市区町村の介護保険課に相談するのもひとつの方法です。
>>ケアマネジャーを選びたいときの相談先 

すでに介護サービスを受けている場合、ケアマネジャーを変更しても、そのままサービスを継続できます。

まとめ

自宅で生活をしている方が要介護1~5の認定を受けたら、居宅介護支援事業所と契約を交わし、ケアマネジャーにケアプランを作成してもらいます。つまり、介護保険を利用する際に、最初に出会う介護の専門家がケアマネジャーです。その後も、毎月1回は利用者を訪問してくれるので、身近な専門家として、いろいろと頼ることが多くなるでしょう。

ケアマネジャーになるには、一定の職種で5年以上かつ900日以上の実務経験が必要です。一定の職種とは、介護福祉士、看護師、医師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、栄養士などの国家資格か、生活相談員、支援相談員、相談支援専門員などの相談援助業務です。もともとの資格によって、知識も経験も異なるため、ケアマネジャーを選ぶ際に確認しておくといいでしょう。

ケアマネジャーは、身近な介護の専門家として在宅介護を支える存在です。ケアマネジャーに「どこまで相談していいのかな」「どうやって選んだらいいのかな?」「ケアマネジャーを利用するメリットってなんだろう」とお悩みの方に、この記事が解決のお手伝いになれたら幸いです。


※この記事は2020年10月時点の情報で作成しています。

更新日:2020年12月11

監修者:鵜沢静香
監修者:鵜沢静香

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。