清拭をする方法とは?入浴ができない時に!

家族が清拭をする方法

清拭とは、入浴ができない時などに温かいタオルで身体を拭く方法です。その効果は身

体を清潔に保つだけではありません。清拭のメリットや家族が行うためのポイント、清拭以外の清潔保持方法をまとめました。入浴できない!という時の参考にしてください。

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清拭(せいしき)とは

清拭とは

清拭(せいしき)とは、温かいタオルで身体を拭いて高齢者の身体を清潔に保つ方法です。

全身の清潔を保つことができる全身清拭と、身体の一部分を清拭する部分清拭があります。「どうせやるなら全身の方が…」と思うかもしれませんが、全身清拭には時間がかかってしまうため、高齢者は体力を消耗してしまいます。もちろん介護者も同じです。

どんな時に

身体を清潔に保つ方法としては、入浴が最も効果的だと言われています。清拭は以下のような理由で入浴ができない時に行うようにするといいでしょう。

  • 体調不良や拒否などの理由でデイサービスに行けず、入浴サービスが受けられなかった時
  • 年末年始などで訪問入浴サービスがお休みの時
  • 汗をかいた時や汚れが気になる時
  • 体調不良のため入浴を避けたい時

また、台風の影響で停電が長引いた際には、ガスでお湯は沸かせたという施設や家庭で清拭が行われていました。

年末年始などで訪問入浴サービスがお休みの時には、ケアマネジャーが訪問介護サービスで清拭をしてもらえるように手配してくれます。体力や介助に自信がない方は、お願いしてみるといいでしょう。全額自己負担の自費サービスとして、介護事業者にお願いすることもできます。料金の目安は1時間のサービスで4000円から5000円程度です。詳細はケアマネジャーに確認をしてください。

清拭の効果

清拭で得られる効果は、汗や汚れを落として身体を清潔に保つだけではありません。入浴と同様に新陳代謝を促進して老廃物の排出を助ける効果や血液やリンパの循環を促進する効果、リラックス効果もあります。

また、身だしなみが整うことで自信を取り戻し、低下していた意欲の向上が期待できます。

また、マッサージで褥瘡(じょくそう)を予防する効果もあります。 入浴ができない時に行う清拭ですが、心身に良い効果をもたらす清潔保持方法だといえるでしょう。

清拭の準備

清拭の準備

 

清拭を行う前の準備について説明します。

準備するもの

清拭の際には、まず次のものを用意しましょう。

  • 好みよりも少し熱めのお湯
  • 清拭用のタオル(身体用、顔用、陰部用)
  • 乾いたまま使う用のタオル(身体用、顔用、陰部用)
  • バスタオル(体を覆うため)
  • ビニール袋
  • 保湿剤(必要なら)
  • 清拭後の着替え

清拭に使用するタオルの例

清拭に適した環境

部屋が寒ければ、23度から25度に温めておきましょう。隙間風が入らないように窓は閉め、プライバシーに配慮してカーテンも閉めておきます。

冬の間は暖かい日中に行うといいでしょう。 本人に体調不良がないかを確認します。また、体調が変わりやすいので、空腹時や満腹時は避けたほうがいいでしょう。

全身清拭のやり方

前身清拭のやり方

準備が整ったら、次は清拭です。タオルをお湯で濡らして搾り、身体を拭きます。

身体を拭く順番

身体を拭く順番

心臓にむかって、優しくなでるように拭きましょう。タオルの端は固いため、皮膚に当たらないように内側に丸めておくと安心です。プライバシーの配慮と身体の冷え防止のために、拭いていない部分はバスタオルをかけておきましょう。

それぞれの部位について、拭き方のポイントを紹介します。

腕や手

指先から肩へ向けて、やさしく拭きます。 このとき、手首の関節や肘の関節をもう片方の手で軽く持つと拭きやすくなります。

胸や腹

胸は円を描くように拭き、腹は中心であるヘソのあたりから「の」の字を描いてマッサージするように拭きましょう。

背中、腰、お尻の拭き方

横向きになってもらうと拭きやすいです。マヒがある方は、マヒがある方が上に来るように横を向いてもらいましょう。体勢が崩れないように片手で支えながら行います。

熱めに温めたタオルで背中を多い、温めてから行うのがおすすめです。 首から肩にかけて拭き、背骨に沿って上下に拭きます。

肩甲骨からわき腹はらせん状にくるくると拭きます。お尻は丸を描くように片方ずつ拭きましょう。お尻の上の骨周辺は、意識してマッサージをしておくと褥瘡予防になります。

陰部の清拭

まずは自分でやるように促しましょう。任せると言われたときには、女性は前から後ろへ、男性は亀頭に配慮して清拭を行います。

下肢の清拭

片方ずつ膝を曲げながら、足首から太ももに向かって拭いていきます。

汚れやすいところ

汚れやすいところは、脇の下や胸の下など、汗をかきやすい部分です。必要に応じて石鹸を使用すると爽快感が得られます。

全身清拭のポイント

  • 冷めないように、タオルはなるべく肌から離さない
  • 体力の消耗を抑えるために、肌に残った水分は乾いたタオルでふき取る
  • タオルの触れる面を変えながら清拭する
  • しわは伸ばして拭く
  • 褥瘡やアザ、ケガなどがないかを観察しながら行う
  • 褥瘡に気づいたらかかりつけ医や訪問看護に相談する。その部分は力を入れずにそっと拭く
  • 高齢者の肌は傷つきやすいたま優しく行う
  • 手早く行う(目安は10分以内)

慣れていない方が全身清拭を、完璧に手早く行おうとするのは大変です。慣れるまでは何日間かに分けたり気になる部分だけにしたりと、本人にも介護者にも負担がかかりすぎないように行ってください。

顔の清拭のやり方

入浴できなかった時だけではなく、起床時にも行われることが多いのが顔の清拭です。心地良く1日をスタートさせるためにもおすすめです。

やり方

基本的にはご自身で拭いてもらいましょう。家族は拭き足りないところや細かい場所を手伝います。ハンドタオルを三つ折りにすると拭きやすいです。

目の周りの拭き方

家族が介助した方が良い部分です。

目頭から目じりにかけて拭きます。感染防止のため、一度使用したタオルの面で他の場所を拭かないようにしましょう。目やにがこびりついている場合には、一度タオルで蒸すようにしてからだと取りやすいです。

特に汚れやすいところ

目の周りに加えて、鼻や耳の後ろは皮脂や汚れが付きやすいので、必要に応じて介助をします。

清拭の他にも知っておきたい清潔保持方法

清拭のほかにも知っておきたい清潔保持方法

入浴ができない時に清潔を保持する方法は清拭だけではありません。他にも以下のような方法があります。

足浴(そくよく)

時間や身体的な負担を考えると全身の清拭は難しいというときには、足浴がお勧めです。足をお湯につけることで簡単にお風呂気分を味わえます。また、足を温めることで身体が温まりますし、リラックス効果もあります。

イスやベッドの端に座って行う場合には、そのまま足をお湯の入った洗面器に入れてもらいます。ベッド上で行う場合には、膝の裏にクッションを当てて曲げた状態にし、防水シートを敷いた上にお湯の入った洗面器を置きます。

洗面器の中で石鹸をつけて洗い、足を上げてかけ湯をした後で、バスタオルで水分をふき取ります。足を動かす時には、かかとを支えるのがポイントです。

足浴よりもさらに手軽にできる手浴もあります。

ドライシャンプー

介護職員はベッド上でシャンプーを行うことがあります。しかし、家族が同じことをするのは難しいでしょう。

どうしても頭や髪の臭いが気になる時には、水なしでシャンプーができるドライシャンプーがおすすめです。

ドライシャンプーを髪や頭皮になじませて拭き取るタイプが一般的です。また、シートで髪を拭くだけといった商品もあります。

まとめ

温かいタオルで身体を拭く清拭は、入浴ができなかった時に家族ができる方法です。デイサービスに行けなかった時や体調不良で入浴できない時、年末年始などで訪問入浴がお休みの時などに行うといいでしょう。新陳代謝を促したりリラックスできたりといった効果もあります。家庭にあるものでできますが、体力を使うので手早く行う必要があり、慣れていないと難しいでしょう。慣れるまでは何日かに分けて行ってください。

家族が行うには負担が大きいときには、ケアマネジャーに相談をしてみましょう。訪問入浴がお休みの時には介護保険サービスである訪問介護に切り替えたり、全額自己負担の自費サービスで行える事業所を探してくれたりします。自費サービスの料金の目安は、1時間のサービスで4000円から5000円程度です。

身体を清潔に保つ方法としては他にも、足をお湯につける足浴やドライシャンプーなどがありますので、検討してみてください。

※この記事は2020年3月時点の情報で作成しています。

 

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監修者:鵜沢静香
監修者:鵜沢静香

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。