脳や脊髄、または筋肉自体が異常をきたすことで、さまざまな運動障害を招く病気のことを「神経・筋疾患」といいます。
その代表的な病気がパーキンソン病です。ほかにも脊髄小脳変性症、筋委縮性側索硬化症、筋ジストロフィーなどがあります。
これらの病気は、症状が少しずつ進行していくのが大きな特徴であることから、早い段階から症状に合わせてリハビリを行うことが大切だといわれています。
発症して間もない頃は在宅生活も可能で、通院で治療を受けながらリハビリも同時に続けていくことになります。
リハビリを行うことで、進行を遅らせたり、筋力を維持して筋肉や関節が固まらないようにしたりすることが可能です。
ただし、リハビリをしていても少しずつ進行していくため、次第に日常生活が難しくなります。
病気によっては入院して治療することになりますが、ギリギリまで在宅介護を続ける人も多いようです。
なお、病気によってリハビリの方法も次のように異なります。
パーキンソン病のリハビリ
パーキンソン病のリハビリは以下のようなものがあります。
日常生活でのリハビリ
歩いたり入浴したり、階段の昇り降りなど、日常生活におけるあらゆる動作そのものがリハビリになります。
細かい動作や立ち上がりなどに苦労していても手を貸さず、自分のことは自分ですることが重要です。
まずは、正しい姿勢を保ち、頸部や胸腰部の関節の動きを維持することから始めましょう。
可能であれば仕事はそのまま継続し、今までやったことのない家事などに挑戦してもらうのもいいかもしれません。
歩く練習や体操などの運動を継続
運動の継続がパーキンソン病の進行予防に効果的なことはよく知られています。
症状が進行すると、すくみ足になったり、姿勢の維持がうまくいかず歩き始めなどに転倒しやすくなったりします。
>>参考記事:「すくみ足」ってなに?すくみ足の原因と対策
そのため、リハビリではできるだけ手を大きく振って、歩幅を広くする練習を1日30分程度するといいでしょう。
すくみ足対策のポイントは2つあります。
●聴覚的刺激:1・2・1・2と声をかけてリズムを聞きながら
●視覚的刺激:廊下などに等間隔に並んだ線を引いて、またぎながら歩いてもらう
また、体を柔らかくしてバランスを保つために、日常生活の中でラジオ体操、太極拳などを取り入れてもいいでしょう。
各パーツごとに起こる症状とリハビリ
各パーツに起こる症状と対策は以下の通りです。
●下半身:足の動きが悪くなる
(対策)関節を動かしたり、筋肉を鍛える
>>変形性膝関節症など骨関節疾患のリハビリ
●上半身:関節が固くなる、前かがみの姿勢になる
(対策)着替えの際にボタンを留めるなど指先を動かす作業をしたり、背筋を伸ばす姿勢をできるだけ取る
●顔の周辺:表情が乏しくなる、嚥下障害が起こる
(対策)表情筋や舌、咽頭部、口の周りの筋肉を動かす。唇を閉じたまま、舌を歯茎と唇の間をなめるようにぐるっと左右に10回ずつ回すのを、1日に数回行う。口の周りの筋肉が動き、さらには唾液が出やすくなるなどの効果がある
脊髄小脳変性症(SCD)のリハビリ
小脳や脳幹から脊髄にかけての神経組織がダメージを受け、だんだんと意思通りに身体が動かせなくなる脊髄小脳変性症(SCD)。ダメージを受けた場所によって、症状が変わるため、一人ひとりにあったリハビリが必要になります。
《リハビリ内容の例》
・バランス機能を維持、向上させる訓練
・起き上がりや立ち上がりの練習
・まっすぐ歩く練習
・発声の練習
・パーキンソン病のリハビリ
かかりつけの医師や専門家の指導を受けてリハビリを行いましょう。
筋委縮性側索硬化症のリハビリ
進行性の病気ですが、比較的進行が早く、急速に筋力が低下します。
リハビリではできるだけ日常生活をスムーズにできるよう、装具をつけたり、車いすなどの補助具を使ったりすることが多いようです。
筋肉は使わないとどんどん能力が低下し、それが原因で呼吸困難を引き起こす場合もあります。
そのため、筋力を維持できるように、日常の動作でしっかりと腕や足、腰も肩などを動かすようにします。
ただし自分で動かせない場合は、装具をつけた状態で可能な範囲で行いましょう。
無理をしたり、負担をかけすぎたりすることがないようにしてください。
筋力の使い過ぎは逆効果です。
医師の指導の元、状態に合ったリハビリを行うことが大切です。
リハビリの場所
一連のリハビリは「機能訓練強化型デイサービス」、「デイケア(理学療法士や作業療法士がいるデイサービス)」、「外来リハビリテーション科」などで受けられます。
また、作業療法士が自宅でリハビリをしてくれる「訪問リハビリ」という方法もあります。
一度、ケアマネジャーさんに相談をしてみてください。