高齢者の入浴の注意点と方法

 

高齢者の入浴の注意点と方法

高齢者にとっての入浴は、体の清潔を保つ以外にも多くのメリットがあります。しかし安全対策を行わなければ入浴中のちょっとした事からの命の危険も有ります。また、高齢者の中には実際に命の危険に直面したからや、面倒だから等の理由で入浴拒否をする方もおられます。 今回は、高齢者が安全に安心して入浴するためには何に注意すべきか、また、入浴を嫌がられてしまう方にはどのようにして清潔を保持していけばよいかについて詳しくご紹介します。

 

高齢者の入浴効果

高齢者の入浴効果

入浴は高齢者において様々な良い効果をもたらします。清潔保持からの感染予防や入浴の醍醐味ともいえる爽快感やストレス発散からの心身をリラックスさせる効果も有るといわれています。

他には入浴に伴う一連の動作からの温熱刺激は一般的な運動と同様のトレーニング効果があると考えられ、実際に健康な高齢者が毎日入浴することで要介護リスクを減らすことができるという研究結果も出ています。また、お湯の中で浮力が働くことによって、関節などの痛みの緩和が期待できるようです。

入浴による注意点

入浴時の注意点

さまざまな効果がある入浴ですが、高齢者の場合特に注意をしなければ、命にかかわる可能性もあります。どのような部分に注意をしていけばよいものでしょうか。

高齢者の入浴は半身浴が基本

高齢者の場合は、肩までつかる全身浴は心臓への負担が大きいので半身浴が望ましいです、しかし半身浴でも長湯は危険も考えられます。そして体を洗う際は、本人が出来る部分は自分で洗ってもらって下さい。そうすることで、入浴時間が自然とリハビリの時間となります。

また、入浴時にはあらかじめ体調を確認して、異常がなければ入浴します。入浴前に体温・脈拍・血圧を測り、異常がないことを確認することが大切です。 もしも、異常があれば入浴を中止されることをおすすめします。

入浴時間帯

日本人は夜寝る前の入浴や、朝起きて入浴する方がいらっしゃいますが、高齢者の入浴はなるべく陽のある時間に入ることをおすすめします。その理由は、何かあった時に医療機関にすぐに対応してもらえるからです。また1日の中で体温が上昇し、血圧の安定する16時から19時頃まの入浴が望ましくお勧めです。

入浴時間目安

お風呂は気持ちがよく、ついつい長風呂したくなってしまうかもしれませんが、長湯は高齢者の体に負担をかけてしまいます。湯につかる時間は10分程度を目安とし、お風呂に防水時計を置いたりタイマーを置き時間が分かるようにしておきましょう。

入浴温度

高齢者は知覚が鈍感になるため、高温で入浴する事も少なくありません。高温のお湯で入浴すると皮膚の乾燥や体温を上昇させて意識障害から、溺水など入浴の事故の元になりかねません。お湯の温度はぬるめの39度~40度くらいが適温です。近年のお風呂は自動で湯の温度を調節するお風呂も有りますが、無い時はお風呂に水温計を浮かべるなどして、温度が分かるようにお湯の温度を調節できるようにしましょう。

ヒートショック

ヒートショックとは温度の急激な変化で血圧が大きく変動することにより、失神や不整脈などの症状がみられる事です。場合によっては死亡事故へと繋がる可能性があります。暖かい場所から急に寒い場所へ移動したときに起こりやすい為、浴室と脱衣所の温度差を少なくするように心がけましょう。また、持病がない方にもヒートショックは起こります。

転倒防止など安全に配慮

浴室の床は滑りやすいので、転倒には十分注意しましょう。

高齢者は体のどこかに慢性的な痛みを抱えている方が多いので、浴室への移動や浴槽へ入る際など、思うように体が動かせず転倒するケースがあります。ゆっくりと確認をしながら誘導しましょう。

入浴を嫌がる場合

無理に入浴をさせようとすると、その後ますます入浴が嫌いになる可能性があります。

工夫しながら声をかけて誘導しましょう。また、浴室へ入ったとしても、体の洗浄を嫌がる場合があります。

ここでも無理に洗おうとせず、例えば「今日は頭だけ」といった具合に、本人が納得した部分だけ少しずつ洗います。

なお、本人に「自分で洗いたい」という気持ちがある場合は、なるべく尊重してください。背中など自分では洗えない部分のみ、さりげなく手伝うかたちで洗うのがよいでしょう。

入浴を嫌がる場合

誘導方法

まず、入浴を嫌がっている場合にはなぜ入浴を拒否しているかを知りましょう。 特に認知症の方では衣服の着脱の手順や入浴の手順を忘れてしまい、面倒になっているといった原因も有るようです。

また、入浴拒否があっても洗髪だけはしたい、身体は洗いたい、爪を切りたいなど思いを持っている方もいます。爪を切るため、頭を洗うためなど浴槽に浸かる以外の目的を伝えまずは脱衣所へ、その後浴室など徐々にお風呂場へ誘導するのも効果的です。

『今日は柚子湯に入りましょう!』等も効果が有るかも知れません。

※また、高齢者は体内の水分が元々少ないので、入浴後の水分補給を忘れずにしましょう。

訪問入浴介護等の紹介

介護保険サービスの訪問入浴介護やディサービスでの入浴を活用する事もお勧めです。家族も無理せずに訪問入浴介護等のプロの力を活用しましょう。

すんなりと、楽しみながら入浴して貰えるかも知れません。

訪問入浴介護やディサービスでの入浴をお考えの方はケアマネージャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。

お風呂のリフォーム

お風呂を嫌がる理由として手摺りの不足や浴槽の跨ぎが困難等も考えられます。その場合にはお風呂をリフォームして環境を整えましょう。

お風呂のリフォームの例としては手すりをつける、段差を解消する、滑りにくい材質の床にする、お風呂の間口を広くするという物が有ります。またヒートショック対策に浴室暖房乾燥機を入れるのも良いですが、介護保険対象外です。自治体によっては介護保険外サービスで補助金が出る事も有りますので事前に自治体等に問い合わせて下さい。

浴室リフォームには介護保険の住宅改修が適用され、20万円までは1割(所得に応じて2割または3割)の負担で改修可能です。ただし、工事内容や料金等に条件が有るので事前の確認が必要です。

浴室のリフォーム

お風呂の不安を解消するグッズ一覧(入浴補助用具の紹介)福田福祉

最近は入浴で使える様々な入浴補助用具が有ります。 例えば背もたれの有るシャワーチェアや浴槽の中に入れて使用できる椅子、浴槽を跨ぐ事が不安でも浴槽に移動しやすいバスボード等も有ります。介護保険の特定福祉用具購入を利用する時は購入前に必ず指定を受けている福祉用具専門相談員かケアマネジャーへの相談が必要です。

安寿 高さ調整付 浴槽手すり

高さ調整付き浴槽手すり

折りたたみシャワーベンチ IS

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お風呂ピタットシート

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足湯

体調がすぐれず、入浴が出来ない時に足湯は如何でしょう。

ベッド上で寝たままでも可能です、爽快感やリラックス効果、血行促進が期待出来る、足湯も有ります。足湯とは足のみを湯を張った洗面器などにつける部分浴です。

担当のケアマネージャー等に相談してみましょう。

※この記事は2020年 3月時点の情報で作成しています。

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監修者:福田 菊乃
監修者:福田 菊乃

ケアマネジャー(介護支援専門員)社会福祉協議会の職員として13年勤務。現在は要介護認定調査員を行っている