タイプ別に解説!誤嚥を起こしにくい姿勢とは

誤嚥を起こしにくい姿勢とは

 

誤嚥を防いで食事を安全にとるためには、正しい姿勢が大切です。この記事ではイス、車イス、ベッドなどの食事をとるスタイルや本人の状態ごとに正しい姿勢をとるポイント、そして姿勢とあわせて気を付けたい点をまとめています。ぜひご確認ください。

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正しい姿勢で誤嚥を防ぎましょう

正しい姿勢で誤嚥を防ぎましょう

高齢者の健康を維持するだけではなく、大切な楽しみでもある食事。栄養バランスや水分補給など、気をつけたいことはいくつかありますが、食事中に一番注意したいのが、誤嚥(ごえん)事故です。

誤嚥とは、飲食物や唾液が誤ってのどや気管に入ってしまうことです。普段意識しなくても、私たちが口にした飲食物や口の中で分泌された唾液は、のどを通って食道から胃へ送り込まれます。しかし、高齢や脳卒中などによる後遺症が原因で、「嚥下(飲みこみ)」の機能が低下してしまうと誤嚥は起こります。

誤嚥によってムセたり咳が出たりすることが続くと、食事が憂鬱なものになってしまいますし、飲食物と一緒に菌が肺に入ってしまうと誤嚥性肺炎を引き起こす可能性もあります。場合によっては窒息してしまうかもしれません。

誤嚥を予防するために大切なのが、正しい姿勢で食事をとることです。

食事中の誤嚥のサイン

食事中の誤嚥のサインには、ムセや咳の他に次のようなものがあります。ムセや咳は、気管に入った異物を外に出すために反射的に起こるものです。状態によっては誤嚥しているのにムセや咳を出せない人もいますので、誤嚥のサインを見逃さないようにしましょう。

  • のどからゴロゴロと音がする
  • 食事中や食後に声を出すとかすれていたり、痰が絡んだようになっている
  • 食事中に鼻水が出る

誤嚥を防ぐ顔の角度

誤嚥を防ぐ顔の角度

誤嚥を防ぐには、食べ物が気管に入らないような顔の角度を保つことが大切です。

あごが上がらないように

ドラマなどで「気道確保」と言いながらあごを上げて人工呼吸をするシーンを見たことはないでしょうか。

あごを上げることで、気管に空気が入りやすくなります。 空気だけではなく飲食物なども気管に入りやすくなってしまうので、食事中にあごが上がっていないかを気を付けるようにしましょう。

見上げるような位置にテレビがあったり、食事の介助をする人が高い位置から食べさせたりすると、あごは上がりがちです。

誤嚥をしにくい、食事の姿勢をタイプ別に解説

誤嚥をしない姿勢とは、足で床を踏ん張ることができ、少し前かがみの姿勢です。高齢者の食事をとるときのタイプ別に、誤嚥をしにくい姿勢を確認しておきましょう。

イスに腰掛けて食事を摂る場合

イスに腰掛けて食べる場合は、座面に浅く腰かけて両足を床にしっかり付けるようにしましょう。膝が90度の角度になるのが理想的です。 

 

椅子に腰かけて食事を摂る場合 

足で踏ん張って体がイスからずり落ちないような体勢になると、自然と前かがみの姿勢になります。

足を踏ん張ると自然と前かがみの姿勢になります

車イスで食事を摂る場合

車イスに腰掛けて食事を摂る場合にも、基本的にはイスに座っている場合と姿勢の作り方は同じです。足の裏が床についていて膝が90度になり、前かがみの姿勢になるようにします。

車イスの足を置くフットレストから、足を床におろすようにしましょう。 足をおろして床を踏ん張れる姿勢にすると、前かがみになって食べやすくなり、誤嚥を防止できます。

また、車イスに座った時に座面が沈み込んでしまう場合には、イスに座りなおした方が食べやすくなります。

ベッドの上で食事を摂る場合の姿勢

ベッドの上で食事をとる場合にも、足を踏ん張れるような姿勢を作ることが大切です。 膝の裏にクッションを置き、足の裏にクッションや台などを置いて踏ん張れるようにします。ベッドの上ですが、下半身はイスに座ったような形になるイメージです。こうすることで腹筋に力が入り、嚥下をしやすくなるというメリットがあります。

ベッドが30度以上になるようにキャッチアップし、あごが上がらないよう頭部にクッションや枕を入れて調整します。

食べたものが胃から逆流するのを防ぐため、食後もしばらくは上体を起こした状態にしておきましょう。

半身まひがある場合の姿勢

半身まひがある方は、まひがある方に身体が傾きやすく、食べる姿勢が崩れてしまいがちです。まひのある腕をテーブルの上に乗せると姿勢を保持しやすくなります。

円背の方

円背とは背中が丸まった状態のことです。一般的には猫背と呼ばれています。背中が丸まっているので胸とお腹が圧迫されてしまうので嚥下しにくく、食事の際にあごが上がりやすい傾向があります。

イスに腰かける場合には少し浅めに座ってもらい、背中にクッションを入れてイスとの空間を埋め、必要に応じて太ももに厚さを調節したバスタオルを挟んで、顔が前を向いてあごがひかれている姿勢が取れるようにします。

車イスの場合には、背張りの調整で楽にする方法やティルトやリクライニング機能付きの車イスを利用するといった方法があります。詳しくは担当の福祉用具専門相談員に相談してみてください。

誤嚥を防ぐために気を付けたいポイント

誤嚥を防ぐために気を付けたいポイント

誤嚥を防ぐために、姿勢の保持とあわせて気を付けておきたいポイントをまとめます。

自分で食べる

食事はできるだけ自分の意志で行える状態にしてあげることが大切です。自分の意志で自分の手で食べることで食事に意識が向き、誤嚥事故の予防にもなるでしょう。

自分で食べるために活用したいのが「自助食器」です。自助食器とは、ひとりで食事がとりやすいように工夫された食器類で、手の状態に合わせて持ち手の太さが選べたり、すくいやすいようにお皿に角度が付いていたりするものがあります。

見守りながら、できるだけ自分で食事ができるように配慮してあげることが大切です。

その人にあった形態の食事を

食べ物や水分にとろみをつけたり具材を柔らかく煮たり、その人の噛む力と飲みこむ力に合わせた形態の食事をとるようにしましょう。

高齢者向けの食事宅配サービスや市販品などを活用すると便利です。

口の中の潤いも大切

食べ始めはむせやすいため、最初に水分補給を促して口の中を潤すのもポイントです。また、食後に口の中に食べ物が残っていると誤嚥を起こしやすいので、最後にも水分補給をしておきましょう。

目が覚めているかどうかを確認しましょう

ウトウトしている状態で食事を摂ると誤嚥のリスクが高まります。日中にウトウトしていることが多い場合には、目を覚ました状態のときにすぐに短時間で食べられるように、栄養価の高い食事を用意しておくといいでしょう。

集中できる環境でゆっくりと

テレビがついているとそちらに意識が向いてしまい、食事に集中できません。食事に集中できる環境でゆっくりと食べてもらうようにしましょう。

まとめ

食事をする際に気を付けたいのが、飲食物が気管に入ることで起こる誤嚥です。予防するためには正しい姿勢で食事をとるようにしましょう。あごが上がっておらず、足の裏が床についていて、少し前かがみの姿勢が、正しい姿勢です。

姿勢だけではなく、自分で食べること、その人にあった形態の食事を用意すること、集中できてゆっくり食べられる環境を作ること、しっかりと覚醒していることなども誤嚥を防ぐための大切なポイントです。

※この記事は2020年2月時点の情報で作成しています。

監修者:鵜沢静香
監修者:鵜沢静香

訪問介護事業所職員、福祉用具専門相談員。2015年から安心介護に関わっており、お話を伺った介護家族や介護職員の影響で介護職員初任者研修を取得し、訪問介護の仕事をスタートしました。2022年には介護福祉士、認知症ケア専門士の資格を取得し、自宅で介護をされる人・介護をする人、どちらも大切にしながら訪問介護の仕事を続けています。